悪魔が53人 ページ7
あの阿呆新任が持ち込んだ睡眠促進花で
不覚にも寝入ってしまった
苛立ちはするが軽くはなったか
しかし、この状況は何だ……！？
俺は、耳元で寝息を立てる奴を決して見ないよう
勤めて冷静に思考を巡らせた
こうなる事を少なからず予測し
帰れと言ったはずなのだが
まだ帰ってなかったのか、馬鹿が
誰かに見られでもしたら……
ふと過ぎり、急いで身体を起こした
一つ咳払いをし、
我ながらわざとらしいと自嘲しながらも、
布団に横たわるヴィダを一瞥
「…ッ！？」
声にならない声が漏れる
見た位置が悪かった
少し肌けた首元が、視界に入ってしまった
否、これは事故だ！
見たくて見た訳では断じてない！
それにしても無防備な…
ーー何を考えている俺はッ
見とらん！
俺は何も見ておらんからなッ！
胸中で誰に向けてかの弁明をし、
適当なクロスを引っ張って掛けた
『フフ』
起きたかと思い顔を見たが、そんな素振りはなかった
「全く、どんな夢を見ているんだ…」
こいつには何故か調子を狂わされてばかりだ
頬を撫でろだ、何だと
一体何の利があると言うのだ
『……キ……』
聞き間違いか？
「すき」だと
およそ触れるべきではない
寝言を耳に入れてしまったやもしれない
構内新聞の記事が過ぎり、
また得も言われぬ不快感に襲われた
すると、もう一度そのセリフを吐いた
『…せん、せ……』
頬を染め、
俺に向けた事のない表情を浮かべているヴィダ
その横顔には既視感があった
シチロウと話している時のものだ
そうか
こいつはやはり、シチロウが……
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作者名：まっしろ | 作成日時：2021年2月6日 19時
