会いたかった。【猫の恩返し】

5･ユキちゃんの子？ ページ5

「お、王様ってあの変態猫？！」

「いや、今猫の国をおさめているのは、ルーンってやつだ」

「ってことは……、あの王子様だった猫」


え、じゃあ……ユキちゃんの子どもってこと？！

「え、ほんとに？！」

「多分、そうだと思う。実はな……」


ムタさんの話によると、最近猫の国に4、5匹の黒い猫が侵入し、王様とユキちゃんの息子さんがさらわれてしまったらしい。


「それで、バロンのところにちょうど探して欲しいって依頼が来てたんだよ。お前のことがあってから何かと猫の国と関わることが多くなっちまってなぁ」

少し面倒くさそうに見える。

……でも、まんざらでもなさそうだ。

美味しいものがたくさん食べられているのかも。


「とりあえず、バロンのところに行った方がいいか……」

「え？！」

ムタさんの何気なく発した言葉にわかりやすく反応してしまう。

「なんだよ、行きたくねぇのか？」

「いやいや！！ちがうの、行きたいんだけど、行っていいのかな、って……」

" 本当に必要とした時 "

この言葉がまだどこかに引っかかっている。

しかし、ムタさんはまた面倒くさそうにため息をついた。


「でも、その子猫のこと、助けてあげたいんだろぉ？お前に懐いてるみたいだし、来てもらった方が都合がいいんだよ」


「……バロンも、久しぶりに会えたら喜ぶと思うぞ？」

「えっ……あ、」


私の気になっていた部分の真ん中をつかれて、たじろぐ。

バロンは、喜んでくれるのかな……。

でも、今はそれより大事なことがある。

この子を助けないと。

ユキちゃんの子かもしれないこの子猫を。


「……行く！連れてって！ムタさん！」

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