【呪術廻戦】高専辞めたら先輩病んでた【男主】 (ページ22)

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二十二歩ページ22

『はっ…』

寒い。

荷物を持つために露出した手が、ヒリヒリと痛む。

思わずポケットの中に、
突っ込んでいた片手でさすれば、
氷のような冷たさにぶるりと身体が震える。

手は赤く、耳まで痛い。

きっとそっちも赤いだろう。

『………寒い』

思わず口に出す。

寒い、寒い。

でも冬は好きだ。

言うなれば夏よりは好きだ。

夏はジメジメしたあの暑さが嫌いだった。
それに比べれば、寒さなんて耐えられる。

ザクザクと雪を踏む足音が大きい。

ザクザク、

ザクザク、ザクザク、

ザクザクザクザク、

『…』

まただ。

最近、家に帰ろうとすると度々起こる現象。

足音が増えてる。

多分、また家まで着いてくるだろう。

また、また、、、、、

そう考えると、ぶるりと身体が震えた。
はぁと白い息が絶え間なく吐き出される。

なんで、こんなに怖いと感じているんだろう。

情けない。

いや、知らない人に
ここまで追い回されれば当然のことか？

どうしよう。

逃げる？

でも、そうしても、結局家は知られているわけで。

警察に連絡する？

決定的な証拠はない。

相手が誰なのかも、

なんで俺なのかも、

分からない。

分からない。

「何にもないくせに。何も出来ないくせに」

あの声がぽんと浮かんだ。

そうだ、

結局何をやったって、

俺には無理なんだ。

何をやったって無意味で、何も変わらない。

俺なんて、俺なんて。

『…』

ゆっくり振り返る。

ザクッと足音が聞こえた。

誰かが、こちらを見ている。

きっと、このままじゃ姿を現さない。

俺はそう思って壁の方に行くと、
背をつけてずるずると座り込んだ。

もう、どうでもいいいから、好きにしてくれよ。

きっと、俺がどうなったって、誰も気にしないから。

「…」

誰かが俺の前に立つ。

俺はただ、顔を伏せて、きゅうと目を瞑った。

「…」

震える手を誰かが掴む。

ゴツゴツとした男の手だった。