居酒屋で会った飲み仲間【五条悟】 (ページ8)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:8,354 hit

封印ページ8

｢せめてお前だけでも幸せに暮らしていればと思ったのに…何で死ぬ為にここに戻ってくるんだ…何で俺はお前を殺さなきゃいけないんだ!!｣

これ以上、俺に何を失って欲しいんだよ。

その言葉は何かに憤る様にも、怯える様にも聞こえた。

｢…取り乱して済まない。お前が1番苦しい筈なのに｣

｢全然。私はこれ迄ずっと逃げてきたし、行きしに覚悟は決めてきたから｣

次兄はまた歩を進める。私の部屋を通り過ぎ、次兄も長兄の部屋も通り過ぎ、地下へと続く小さな扉の中へ潜り込むように入る。
昔はもっと大きな扉だったが、儀式後に父が2度と入らぬようにと、最低限の出入口以外埋めてしまったのだ。

地下室へ着けば、そこは大きく広がった空間で記憶と変わらぬ場所がそこに存在した。

｢封印は俺1人でも出来るものだった。数百年後に解れる可能性はあるが、今は頑丈さよりも迅速をとるんだな｣

｢うん｣

｢…不甲斐ない兄ですまない｣

次兄はそう零しながら私の手をグッと握る。そこに1粒、2粒と水が落ちる。

｢兄さん、後の事頼むね。若しかしたら面倒な人が押し掛けるかもしれないから｣

｢？｣

頭の中で浮かんだ銀髪の彼を思い出す。
怒るかな。泣いてくれるかな。案外死に慣れているから無反応かも。そう思いながら私は次兄が書いてくれた封印の陣の中に入った。

私が陣の中に入り、兄が唱え始めると陣が大袈裟に光り始める。
先程まで、聞こえなかった百々目鬼の声が聞こえる。

_A考え直しぃ!!こんな自己犠牲はあかん!!お願い!!

その声に私は少し微笑む。

_大丈夫よ百々目鬼。あなたは分身を辿って元に戻れる。異は絶対に私が食い止める。大丈夫。

そう心中で言えば、更に百々目鬼の声が大きく聞こえた。

違う！A！四宮家の式神は次兄さんがやったんちゃう!!それにこんな状況になって異が何もしてこーへんのも可笑しいやろ!!

そこでハッとし、思わず俯いた顔をあげる。
こんな危機的状況に異が何もしない事もおかしいし、
そうだ。可笑しい。自分の半身を食われて増長した異の力を、あの長兄が放って置くわけが無いのだ。

その瞬間震え上がる程の恐怖が私を襲う。

咄嗟に詠唱する兄貴に向かって叫んだ。

｢逃げろ兄貴！！！｣

｢遅いんだよ気付くのが｣

領域展開。【四方道開】

既に次兄の背後には鎌を持つ長兄。

全て遅かった。

10数年ぶりに見た長兄は。

｢久しぶりだなぁA｣

不吉な笑みを浮かべた。