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五条悟という男 ページ4

「それで、呆気なくAさんを行かせたんですか」

僕の隣で缶コーヒーを飲みながら七海は、此方に睨みを効かせてそう言った。
返す言葉がないなぁと思いながら僕は苦笑する。

此奴が来るまで僕はフリーズ状態だった。頭も録に回っていなかったし、何より別の感情も混ざっていたせいもある。

Aさんを守りたい。守りたかった。しかし彼女が其れを拒んだ。そしたら次は恋情なんてものが出てきた。

彼女を守って、自分が笑顔にしたい。でも其れを彼女はそれを望んでいない。

彼女を笑顔にしたいのに困らせてしまう。
引くべきなのに引けない。恋情のせいで引けない。

自分がどうしたいのか分からない。






「……貴方もそんな顔ができるんですね」

「どんな顔?」

「人間くさい。迷った顔です」

七海は表情筋を動かす事なくそう言った。

「そんなに迷ってる?僕の顔」

「丸わかりです」

「そんなに迷うなら行動したら良いじゃないですか。貴方らしくない」

七海は立ち上がり、ゴミ箱に空になった缶を捨てた。

「嫌われたくないんだよ」

「嫌われたくないと言っていますが、このまま行けば間違いなくAさんとは二度と会えませんよ」

分かってる。そんな事は分かってる。それでも。

「Aさんの困った顔を見たくない。最後まで笑顔でいて欲しい」

「……いい加減にして下さい」

怒気の孕んだ声に思わず七海を見遣る。

「貴方がそんなに小心者とは思っていませんでした」





「我儘で、気分屋で、人を振り回すことばかりして。

しかしどんな窮地も逆転して、
圧倒的な力で捩じ伏せ、
自分の思い描いた未来を確実に叶える

それが五条悟という男ではなかったんですか?」

その言葉に思わず身じろぎする。

そうだ、その通りだ。どんな事でも叶えようとする。そして、其れを可能にする。それが僕だ。

こんな辛気臭いのは僕じゃない。

「それもそーだね。ありがと七海」

腰掛けていたベンチから立ち上がる。

「Aさんを助けに行く。それが僕の『やりたい事』だからね」



















同日 某所

「電話でも言ったけど、久しぶり。次兄さん」

「分かってきたなら、引き返せないぞ」

「分かってるよ」

引き返す気は毛頭ない。









これで全て終わる。

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数学(プロフ) - ぽんさん» ご指摘有難う御座います。先程外させて頂きました。気付いていなかったとはいえ、ぽんさん及び他の読者様に迷惑をかけてしまいました事、大変恐縮に思っております。 (2021年2月28日 14時) (レス) id: 854f7b158c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:数学 | 作成日時:2021年2月28日 12時

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