今度は指にして？【arym】 (ページ8)

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山田side

見てしまった

有岡くんが知念を抱きしめているところを

ぎゅっと、心臓を掴まれたみたいに痛い

俺は2人を見ていたくなくてその場を走り去った

初めて応接室で出会った時から俺は彼だと分かった

あのときと変わらない優しい笑顔

ああ、あのときのままだと思って心がじんとした

だけど、有岡くんは分からなかったっぽい
まあ、見た目は昔と全然違うしあたりまえといえばあたりまえだ

薮先生の計らいで、有岡くんの隣の席になれた俺は、
気づいてもらえなくても、もう一度会えたってことが嬉しかった

放課後

指輪がなくなったことに気づいた

有岡くんが来て、浮かれてた自分を殴りたい

あれは、有岡くんが俺にくれたものなのに……
涙が出そうになったけど、まだ教室を探していないと思って教室に引き返した

そこで帰っていると思ってた知念と有岡くんのあの現場を見てしまったのだ

ショックで、そのあと自分がどうやって家に帰ったのかも覚えていない

ふかふかでお気に入りだった枕は、一晩のうちに水を沢山含んでしぼみそうだった

次の日の朝
知念と会うのが気まずかった俺は委員会の仕事があるとメールをして早めに家を出た

教室で、1人ぼーっと昨日のことを考えているとまた涙が出てきそうだった

そんなとき、教室をガラッと開けて有岡くんが入ってきた

有岡くんは嬉しそうに昨日の話をしてくれた

聞きたくないのに、そんな話
そう思ったけど、有岡くんが初恋の人に指輪を渡したという話を聞いてぇ、と声が漏れた

初恋……？それって、俺のこと……？
ねえ、有岡くん、それ俺なんだよ……知念じゃないよ……

そう喉まで出かかった言葉
だけど言えるはずない

だって、信じてもらえないもの
こんな俺の見た目じゃ……

嬉しそうに昨日のことを話す彼を見て、本当だったらその笑顔は俺が受け取るはずだったのに……と思った

俺じゃない知念に向けられた笑顔はとても可愛くて、ほんとうに知念のことが好きなんだと思わせる

その笑顔を見ていると、やっぱり好きだという気持ちを自覚せざるをえない

悲しくなってきてしまうのに、

馬鹿な俺は有岡くんとふたりっきりで話す機会をつくるために馬鹿な提案をした

山「役に立てるかはわからないけど……、相談なら乗るよ……？」

有「山田くんがいいなら、俺はありがたい！！」

初めて俺に向けられた笑顔

それから、少しずつ仲良くなっていった