夜の水晶【文スト】【実況者】 (ページ2)

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依頼人ページ2

暫くして探偵社の扉が突然開いた。

「こんにちは。」

鈴のような高めの心地よい声。

社員全員が声の主の方を向く。

「先程、電話で依頼をした者なのですが……。」

「あぁ、此方へおかけ下さい。」

依頼人は入口近くの応接間に案内された。

(しかし……。)

美人だ。

それはその場に居た事務員、調査員、性別問わず全員が本能的に感じたことである。

桃色の生地に花の刺繍が印象的なショールの下には黄色いロングのワンピースを着ている。
肌の露出が少ないせいか、未だ幼さが残っているようにも見えるが大人の色気を醸し出しているようにも見える。
来客時用に設えられたソファにちょこんと座っている様は異国の仏蘭西人形のようだ。

なんとも言えぬ不思議な雰囲気に探偵社一同は圧倒されていた。

「そ、それで依頼の内容を……」

「その前に美しい君の名前を聞きたいな♡」

太宰が動いた。

(やっぱりか……。あああ国木田さんなんか震えてるし……。あああ依頼人さんも動揺してる……。)

「え……っと、『桃園花子』(モモゾノカコ)と言います……。」

「へぇ〜花子さんか〜……。」

一瞬太宰の顔が曇った気がしたが敦だったがそれは幻だったとすぐに思った。

それから家族構成やら職場やら挙句の果てには「今週末出掛けない？」とまで云っていたので、調査員全員で押さえつけた。

「改めて依頼内容をお聞かせください。」

約10分程かかり漸く振り出しに戻った。

「私の勤め先は先程太宰さんに申し上げた通りしがない中小企業です。なのですがつい先日、爆破予告と共に爆弾が届けられました。」

花子は悲しげな表情を見せるが、話を続けた。

「差出人不明の爆弾です。幸い不発でしたが火薬が込められており、不発の原因も部品の損傷だったらしく……。」

「爆弾の差出人を探して欲しい。
という事か。」

「はい……。」

花子はそれ以上話さず俯いてしまった。

「わかりました。敦、谷崎、準備しろ。」

二人は「はい。」と威勢の良い返事をした。

「兄様が行くなら、ナオミも御一緒させていただきますわ！」

「ねぇねぇ私は？」

「普段の仕事を片付けていれば考えた。」

「国木田君酷いなぁ……。」