おみと私と ページ38
「めりーーーくりすまーーーーす！！！！！」
玄関に入ってきた臣目掛けてクラッカーを鳴らす
ビクッと肩を跳ねて、それからいつもみたいにジトっとした目で睨む臣
臣「クリスマスは明後日だけど」
「明日には帰っちゃうんだよ、ちょっとはやめの！クリスマス！いえーい！」
臣「クリスマス1人のくせに何言ってんだよ」
「しばき倒すぞ？お母さんと一緒だわバカ」
洗面所に手を洗いに行く臣の後ろについて行く
「あ、ケーキ作ったんだ！食べる？」
臣「ん、食べる」
「めちゃくちゃ美味しくできたから楽しみにしてて〜」
ガチャとドアを開けて、食卓につく
美味しそうなシチューが並べられていて、1年前もこんな感じだったなあってじんわり思い出す
懐かしいな、すごく
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「はい、どうぞ」
臣「ん」
ベランダに座って毛布をかけて
2人でココアを乾杯してからケーキを口に運んだ
「おいしい？」
臣「美味い」
「そりゃよかった」
パクパクと食べる臣の横でココアを飲みながら空を見上げた
東京よりも少し離れたこの場所は、住宅街の光ぐらいで夜空が綺麗に見える
臣「…宮に会った」
「え？」
臣「ユース合宿の時」
「あ、ああ…」
そういえば言ってたな、そんなこと
臣「…アイツのどこがいいのか、俺には分からなかった」
結構ポンコツだよな、アイツと真面目に言う臣がおかしくて思わず吹き出した
「…ぶっ、あはは！確かにバレーが関わると精神年齢下がるよね」
臣「…俺は、お前には幸せになって欲しいって思ってる」
「……え？」
臣「もういいだろ、A」
「……よく、わかんないや、」
いっつもそう、ほんと臣だけには勝てない
いつの間にか流れていた涙を、臣が親指で拭ってくれる
そのまま優しく頭を撫でて、ゆっくり肩に寄せられた
臣「好きなら好きでいい、忘れられないなら忘れなくていい。
無理に忘れようとするな、1番しんどいだろ」
「で、でも、私は＿＿＿＿＿」
臣「誰もAを、責めないから」
「っ、」
ボロボロと涙が溢れて、臣の肩に涙が染みる
ただそれをじっと黙って臣は頭を撫でてくれた
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作者名：イオリ | 作成日時：2020年8月12日 23時
