隣の席のデカい人【黒尾鉄朗】

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黒尾side




体育祭の種目決めをした。



男子の大半がバスケや棒倒しといった女子ウケが最高にいい種目を選ぶ中で、俺と夜久は迷わずバレーを選んだ。



さらに短距離走のタイム順で選抜され、2つ目の種目はリレーで決まった。



隣の席の高瀬さんはどうやら運動が苦手なようで、団体競技ではなく個人競技である借り物競争にしたようだった。




体育委員である彼女はまったり進行をしていたが、借り物競争のメンバー決めになるといつもの姿からは想像できないくらい素早く、真剣な眼差しで手を挙げるもんだから思わず笑ってしまった。




HRが終わり、借り物競争に情熱を注ぐ彼女に俺は言った。



｢イケメンな人、とか人気者、とかがお題だったらぜひボクの所へ来てくださいネ｣



｢またまた黒尾くん、優しい人の間違いでしょ｣




…冗談で言ったつもりだったのに、彼女が真面目に返すもんだから俺は取り繕うことができず素の反応をしてしまった。






今日の体育から体育祭の種目練習ということで、俺と夜久は体育館でトス練をしていた。



｢やっくん、借り物競争ってどんな練習するんですかね｣



『さーな。お前、気になるなら高瀬さんに直接聞けよ』



｢誰も高瀬さんがどうのなんて言ってません〜純粋に気になっただけですぅ｣



と言って俺が急にスパイクを打っても夜久は綺麗に拾う。くそ、さすがだ。



『お前、わかりやすいんだよ』




…確かに、最近彼女のことを気にかけている自覚はある。



ただ、それは反応が面白いからとか予想外のことをし出すから目が離せないとか、そういう感じのあれであって他意はない、と自分に言い聞かせている。





『黒尾、夜久！お前ら絶対サーブとか全力で打つんじゃねぇぞ』


ゲームが始まる前に対戦相手に言われ、俺はいつものように煽る。



｢手加減はしますケド、ついいつもの癖で打っちゃったらすみませんね？｣



『俺はリベロだからサーブは打たねぇ！その代わりどんなボールでも拾う！』



『くっ、余裕あるのが腹立つぜ…』





ゲームが終わり、水飲み場に向かう。



その途中にある窓で、グラウンドで友達と一緒に走る高瀬さんが見えた。




…借り物競争で長距離？




まあ確かに、借り物競争はほぼぶっつけ本番的な感じだから走るくらいしか練習することがないのかもしれない。




それでも大真面目に息を切らしながら走る彼女を見て、やっぱいい子だな、と再確認し俺は体育館に戻った。

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