ヒーローがログインしました！season3【歌い手】

ヒロイン！１３６ うらたside ページ46

まふまふの話を聞いてまず真っ先に思ったのは、『なんでそんな大切なこともっと早く言わなかったんだ』だった。

ご飯が食べられないこととは全く関係ないと思うけど、自動施術師として患者の負担はできるだけ把握しておきたかった。

それに…仲間としても、知っておきたかった。

絶対、辛かった。

記憶が人格になって思考を乗っ取ってくるなんて、想像もできない苦しみだろう。

他人の辛い過去を見て、それでも何も知らないかのように振る舞うなんて、俺にはできない。

きっと、なぜ言わなかったか聞いたらヴァンプは『めんどくさいことになりそうだったから』とか『めんどくさかったから』って作り笑うんだと思う。容易に想像できる。

う「まふまふは、ヴァンプの力のこといつから知ってたの。」

まふまふはヴァンプの手を握って涙をこらえていた。

ま「結構前から。ヴァンプ入ってきてすぐ、ヴァンプのこと調べて…機密文書にあの力のことが載ってたんだ。」

機密文書。そういえばこいつ、空想管理局勤務だったっけ。

…まふまふはイギリス戦の時、知っててヴァンプに血を飲ませたのか。

俺の考えてることがわかったのか、まふまふは少し笑った。

ま「イギリス戦の前の日。僕とそらるさんは歌詞太郎さんに呼び出されました。
その時に言われたんです。一応出動はするけど、負け戦になるから逃げろって。
でも、そらるさんは困った人だから絶対僕らを見捨てないじゃないですか。僕らの誰かが仮にやられたとしたら絶対その場に残るんですよ。
そらるさんが残ったら、きっとうらたさんだって逃げないでしょ。うらたさん逃げなかったら坂田も逃げない。そしたらきっと、るすくんだって最後まで戦うっていうと思ったんです。」

確かにそうだ。

なんだかんだみんな責任感も仲間意識も強いから、多分残るって言ったと思う。

ま「でも、やっぱり皆で生きたかったんです。ヴァンプには『非常事態で逃げるのに使え』なんて言ったけど、本心では『みんなを救ってくれるかもしれないなら、記憶くらい』って思ってました。」

皆で、生きたかった。

その言葉はこんな時でも嬉しかった。

ま「結局僕はそらるさんに言われるがまま逃げようとして、ヴァンプの強さに救われたんですけどね。」

ヒーローだって人間だから、すぐに迷って決心が揺らいでしまう。

いくら恩のある人にだって、迷いの果てに非情なことをしてしまう時だってある。

坂田も、るすも、そらるさんも。混乱してるだけなんだ。

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