ヒロイン!55 ページ9
あてもなく歩いていたら、建物の陰に見知った金色の頭が見えた。
それは、地面についていて、うごかない。
「るす、さん…?」
ちがう。あれは、るすさんじゃない。るすさんは、あんな風に地面に頭つけたりしない。ちがう、よね。ねぇ。
ま「…ヴァンプ、逃げて。」
後ろから聞きなれた声がした。
振り向くと、まふまふさんが焦ったように私の手を掴んだ。
その横にはそらるさんもいる。
ふたりとも、傷だらけで血が出ていた。
そ「…るすと坂田がやられた。まだ息はあるけど、敵国のEveってやつが近くにいて近づけない。
あっちの要求は、お前。どっからか情報が漏れてたらしい。でも、お前は渡せない。だから、逃げろ。」
そらるさんのこんな声、初めて聞いた。
悲しそうな、声。
ま「行くよ、ヴァンプ。ここにいちゃだめ。」
私の手を引き、早歩きで歩き出すまふまふさん。
「…私が犠牲になればいいだけじゃないですか。私が、相手のところへ捕まってから、自害でもなんでもするから、それで、」
思っていたことが勝手に口をついた。
戦う理由も、覚悟も、私にはろくに用意できてなかったんだ。
だったら、理由が、覚悟がある坂田さんとるすさんを助けたほうがいいじゃないか。
ま「…やめてよ。犠牲になろうとしないで。お願い。」
まふまふさんが、きゅっと手を握る力を強めた。
…泣い、てる?
不思議に思って顔を覗き込もうとしたその時。
ズダダダダダッダンッダダッ
銃撃戦のような音が聞こえた。
…そらるさんの水銃は音が出ない。なのに複数の銃の音がする。もしかして、そらるさん囲まれたんじゃ、
振り返ろうとしたその瞬間、まふまふさんが思いっきり走り出した。
るすさんたちがいたところから、遠くへ、遠くへ。
「まふまふさんやめて、今ならまだ私を差出せるから!ねぇ!!!戻りましょう!!!まふまふさん!!!」
必死に手を振りほどこうとしても、さすが男子と言うべきか、離してくれない。
嫌がっている声も、全部無視。
左脚がビリビリと痛い。べしゃ、と座り込むと、まふまふさんは止まって近くの建物へ私を運んだ。
ま「…僕だって、もどりたいよっ…」
そして簡易的なバリケードを作って座り込むと、しゃくりあげて泣いた。
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PaiN(プロフ) - 初コメント失礼します! いつも楽しみに拝見しています。様々な視点からのストーリー展開や、登場人物の心情など読みごたえがあってとても好きです!!これからも応援しています。更新頑張って下さい!! (2018年1月22日 23時) (レス) id: 7643d58d7b (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり - 初コメ失礼します。少し気になったのですが、80話では主人公ちゃんの髪がラベンダーアッシュと描かれているのに対し、83話ではブルーアッシュと描かれていて、どっちなのかなー?と思いました。演出だったらすみません。更新頑張ってください。楽しみにしています! (2018年1月22日 22時) (レス) id: 7ecf9aae1c (このIDを非表示/違反報告)
96neko - 初コメント失礼します。更新頑張ってください! (2018年1月10日 4時) (レス) id: 35f8ab9167 (このIDを非表示/違反報告)
青いおにぎりちゃん(プロフ) - 面白いです!いつも更新楽しみにしています!ずきりが、図きりになってますよ!わざとだったらごめんなさい! (2018年1月9日 16時) (レス) id: 394a55dba2 (このIDを非表示/違反報告)
れる - 初コメ失礼します!こーゆー感じの小説大好物です。好きです(唐突)毎日のぞきにくるので更新頑張ってください!!楽しみにしています(´ω`)♭ (2018年1月7日 23時) (レス) id: e854100071 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神咲のあ | 作成日時:2017年12月19日 10時