ヒロイン!75 うらたside ページ30
俺が自動施術師を目指したきっかけは、幼馴染の女の子だった。
ずっとずっといじめられて、ずっとずっとリスカがやめられなくて、親からも酷いことされて、ボロボロだった幼馴染。
俺はその子と会っては、リスカの傷口を消毒したり、誰に付けられたかもわからないという痣を冷やしたりしていた。
その子の口癖は、「めんどくさい」。
『めんどくさいことになるから、怒らなくていいよ』だとか
『反抗するだけ面倒』とか言っていた。
…どっかの誰かさんそっくりの口調で。
あるとき、その子が救急車で運ばれるのをみた。
頭から血がダラダラしてて、ぐったりしてて、動かなくて。
『××さん家の子、飛び降りたらしいわよ。いやぁね。』
『あそこの旦那さん、DVしてたらしいわよ。奥さんだって人付き合い悪いし物盗むし最悪ねぇ。』
近所のおばさんたちが、そう喋っていたのが、頭から離れなかった。
結果的に、幼馴染は助からなかった。
その時の日本の自動施術技術じゃ、あの子を救うことなんてできなかった。
俺はあの子のために、なにもできなかった。
…時が経ち、俺は自動施術師になり、特別部隊副隊長になり、ヴァンプに出会った。
あの子とは全く違う。
髪色も、目も、見た目も何もかも違うけど。
だけど、『面倒』って全てを吐き捨てようとする目の中に、あの子とどこか似たものを感じた。
だからこそ、ヴァンプが植え込みに落ちてきた時は息が止まるかと思ったし、同時にものすごく怖かったし、姫に対してものすごい苛立ちを覚えた。
戦いの時、ヴァンプが姫に撃たれて受け身も取れず落ちて動かなくなったところだって、あの子に重なって苦しかった。
坂「坂田です。うらさん、ヴァンプちゃんの回診そろそろ行きましょ。」
こんこん、と二回ノックの後、坂田の声が聞こえた。
ヴァンプは実はまだ、完治したとは言えない。
これは俺と坂田とそらるさんと歌詞太郎さんだけの秘密なんだけど、今あの子が長時間起き上がって体に負荷をかけると、色々よくない。
だから、負荷の状態を調べたり、精神的な状態を調べたりで毎日回診に行く。
う「おう」
一言返事してドアを開けると、坂田がやけにそわそわして立っていた。
う「…なんか、あった?」
そう聞くと、気まずそうに視線を逸らして
坂「なんもない、なんもないです。」
とだけ言って背を向けられてしまった。
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PaiN(プロフ) - 初コメント失礼します! いつも楽しみに拝見しています。様々な視点からのストーリー展開や、登場人物の心情など読みごたえがあってとても好きです!!これからも応援しています。更新頑張って下さい!! (2018年1月22日 23時) (レス) id: 7643d58d7b (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり - 初コメ失礼します。少し気になったのですが、80話では主人公ちゃんの髪がラベンダーアッシュと描かれているのに対し、83話ではブルーアッシュと描かれていて、どっちなのかなー?と思いました。演出だったらすみません。更新頑張ってください。楽しみにしています! (2018年1月22日 22時) (レス) id: 7ecf9aae1c (このIDを非表示/違反報告)
96neko - 初コメント失礼します。更新頑張ってください! (2018年1月10日 4時) (レス) id: 35f8ab9167 (このIDを非表示/違反報告)
青いおにぎりちゃん(プロフ) - 面白いです!いつも更新楽しみにしています!ずきりが、図きりになってますよ!わざとだったらごめんなさい! (2018年1月9日 16時) (レス) id: 394a55dba2 (このIDを非表示/違反報告)
れる - 初コメ失礼します!こーゆー感じの小説大好物です。好きです(唐突)毎日のぞきにくるので更新頑張ってください!!楽しみにしています(´ω`)♭ (2018年1月7日 23時) (レス) id: e854100071 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神咲のあ | 作成日時:2017年12月19日 10時