ヒロイン!65 ページ19
『しね』『ひとごろし』『おまえなんか』『おまえのせいで』『はやく しね』
…『あのこのかわりに しねば よかったのに』
頭の中にガンガンと鳴るように聞こえる暴言と血みたいな夕焼けを見て、ああこれはまた記憶をのぞいているんだと思った。
目の前にはぽつんと座り込む男の子。
男の子の金色の髪の毛がサラサラと風になびいていて、天使みたいだった。
男の子はまだかすかに幼さを残した顔をしているけど、まふまふさんだ。…すぐにわかった。
まふまふさんの足元には、1人の女の子が横たわっていた。
彼女は、血まみれで、お腹が切り裂かれていた。
『ぼくが、ころしたんだ。』
目の前のまふまふさんはただ静かに泣いているだけなのに、頭の中でまふまふさんの声がしっかりと聞こえた。
『その子は、敵国のスパイだった。でもそれ以前に、僕の大切な子だった。』
敵国の、スパイ。それが、自分の好きな人だった。
…なんて、残酷なことなんだろう。
『でも、その子からしたら違ったみたいなんだ。…母国に彼氏がいたんだ。そいつを守って、死んでいった。』
まふまふさんは、二重に裏切られたうえに好きな人まで手にかけてしまったんだ。
ぱんっ、とシーンが変わった。
そこでは、まふまふさんがただ戦っていた。
圧倒的な強さで、人を薙ぎ払っていた。
すると、倒れていたはずの男が起き上がってまふまふさんの肩を撃ち抜いた。
『愛する妻の仇』…そう、叫びながら。
そこで悟った。ああこのひとは、さっきの女の人の『大切な人』だって。
まふまふさんも、ふと動きが止まった。
…それから、虫でも追い払うかのように、その男を殺した。
『あの世でお幸せに』、そう、泣いていた。
『僕がもっとはやく正体に気がついていればこんなことにはならなかったんじゃないか』とか、『僕がいなければ』とか、後悔の念が伝わってくるようだった。
誰がなんと言おうと、まふまふさんが自分の好きな人を殺したことは変わらない。
そしてその好きな人が命がけで守ったものを殺したのも変わらない。
でも、それを悲しむことすら彼には許されない。
だって、『敵を殺した』んだから。
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PaiN(プロフ) - 初コメント失礼します! いつも楽しみに拝見しています。様々な視点からのストーリー展開や、登場人物の心情など読みごたえがあってとても好きです!!これからも応援しています。更新頑張って下さい!! (2018年1月22日 23時) (レス) id: 7643d58d7b (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり - 初コメ失礼します。少し気になったのですが、80話では主人公ちゃんの髪がラベンダーアッシュと描かれているのに対し、83話ではブルーアッシュと描かれていて、どっちなのかなー?と思いました。演出だったらすみません。更新頑張ってください。楽しみにしています! (2018年1月22日 22時) (レス) id: 7ecf9aae1c (このIDを非表示/違反報告)
96neko - 初コメント失礼します。更新頑張ってください! (2018年1月10日 4時) (レス) id: 35f8ab9167 (このIDを非表示/違反報告)
青いおにぎりちゃん(プロフ) - 面白いです!いつも更新楽しみにしています!ずきりが、図きりになってますよ!わざとだったらごめんなさい! (2018年1月9日 16時) (レス) id: 394a55dba2 (このIDを非表示/違反報告)
れる - 初コメ失礼します!こーゆー感じの小説大好物です。好きです(唐突)毎日のぞきにくるので更新頑張ってください!!楽しみにしています(´ω`)♭ (2018年1月7日 23時) (レス) id: e854100071 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神咲のあ | 作成日時:2017年12月19日 10時