探偵の用心棒5【文スト】【江戸川乱歩】 (ページ35)

今日:26 hit、昨日:256 hit、合計:35,780 hit

② ページ35

ため息をつきながら再度煙草に火をつけ、口に運んだ。少し吸ってから煙を吐き出すと、乱歩とパチリと目が合う。

乱「ほんと不味そうに吸うよね、ソレ」

『不味いんだから仕方ないでしょ』

乱「じゃあ吸うのやめなよ」

ドンピシャの正論をかまされ、気まずそうに苦笑いをした。そして夜空を見つめ、目を細める。

『……スッキリするのよこうすると

疲れとか悩みとか

一気に無くなるわけじゃないけど、此れに縋ってる時だけは一瞬だけどうでもよくなる

…ま、直ぐにこの"不味さ"が私を現実に引き戻すんだけど

こんな事で悩んでる暇はないんだって

私がどんな人間で

どんなに駄目か奴か

…だから、割り切れるの』

弱音を吐く彼女は、何時も以上に哀しげに見えた。

間宮は仲間からの信頼も厚く、彼女もそれを自覚している。誠実で、まさに意気自如というやつだ。

しかし、本当は自己肯定感が地よりも低く、何時も何処か哀しそうに見えていた。

_______少なくとも、乱歩には。

乱(_______僕も社長も、周りの皆も、そんなことちっとも思ってないんだけど)

乱歩が黙ったまま間宮の隣へ行くと、彼女は手すりにかけた腕に貌を埋め、小さく呟いた。

『私はわたしが嫌い_______大嫌いなの』

乱「_______ｯ！！」

煙が出ている煙草を見つめ、乱歩は静かに口を開く。
間宮は数秒の沈黙の後、『はぁ』と溜息をついて貌をあげた。

『…悪いわね。変な事云って。

大方、晶子に様子を見に行ってって云われたんでしょ』

『もう帰って』と再度煙草を口に運ぼうとした途端_______

『ｯ？！一寸、なにして_______！！やめなさい！』

乱歩が突然煙草を奪い、自分の口に運んだのだ。そんなことを、彼女が許すはずもなく。

乱「ッごほｯう、おえ」

『莫迦なの？！アンタ吸ったことないでしょ慣れないことしないでよ！』

すぐさま灰皿へ煙草を移し、『飲み物取ってくるから』と部屋に入ろうとすると、パシッと腕を掴まれる。

『なに、離し_______』

乱「僕は、嫌いじゃない」