七人の殺人鬼 (ページ32)

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第３２章「嫌悪」ページ32

カナタ「ノフくんに何してんのお前」

笑わないその姿は殺気を感じ冷や汗が首筋を通る
冷酷な瞳がインラードさんを見つめていた

いつも焦点の合わない目は確実に相手を見据えていてどんなに僅かな動きをも見逃そうとはしない

タム「フェ…フェリ様…」

先程の怒りはどこへ行ってしまったのか

ふるふると震えるインラードさんの表情は悲しげだった。それに御構い無しに飲み干したコップを片手で握りつぶし床に落とす

コトっと落ちたそれは歪な形をしてこれからの
行く先をどこか映し出しているようだった

…本当の殺人鬼の殺し合いだ

息を呑んでしまう

恐怖で己自身、身動きができない

普段からは見えなかった二人の本性
そしてそれがお互いに向き合った殺意が入り混じってその場の空気は淀み歪み合う

しかしこれを止める事ができるのは…

私、だけ…

貴「…ッ」

自分を奮い立たせる為、舌先に歯を当てがい
…己の舌を擦り切った

じわっと広がる血の味、それでも痛みを感じぬ
人形のような感覚

それでも自分があの間に入る力を取り戻す

勢いよくインラードさんに向けたナイフ
そして一気に近づいて突き刺す…その間に私は

躊躇う必要もなく飛び込み、インラードさんを庇う

タム「…なんで」

正気を失いかけていたフェリーチェさんも
私が間に割って入った事に驚き、寸前で手を止める

…ゆっくりとナイフが離れていく

カナタ「…ボク、ノフくんがいじめられてたから怒ったのに～」

いつもの口調で口元はニコニコと口角を上げる
焦点の合わない瞳は微かに殺意をまだ感じる

貴「…ノフさんはインラードさんが気を乱すような発言をタイミングよくかけてきました。

間違いありませんよね？」

そうノフさんに尋ねると気にしていないかのように
足を組み、やれやれといった表情で「そうだな、煽ったよ」と言い放つ

貴「インラードさんは気が早くなってしまい話し合いより気を落ち着かせるために手を出してしまいました。

間違いありますか？」

そうインラードさんき尋ねると口をもごっとさせてから「…そう、よ」と口を膨らませて呟く

貴「これに至った原因として私のコレもあります」

恥ずかしがらずに首の痕を本人に見せつけると
開いていた口を閉ざした

貴「確かに相棒であるノフさんが傷を負った事に対して怒りを覚えるのもしょうがないとは思いますが話を聞いてください」