Prince of Triple face２【降谷零】 (ページ26)

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会場から出てメインロビー付近の広い空間に出ると、息苦しく感じた嫌悪感を吐き出すように小さく息をつく。
女性用化粧室を探して辺りをくるりと見回す。
折角だし、気分転換に豪奢なメインロビーを大階段の上から眺めてみようかな、なんて思いながら階段を登り始めると、隣に来た人に驚いて思わず見上げる。

『沖矢さん…！吃驚した…沖矢さんもお化粧室ですか？』

「いえ、安室さんの代わりに私が貴女に同行しようかと思いまして」

『あ、ありがとうございます…？』

「…少し様子が心配でしたので」

階段を登りきり、2階の静かな通路を歩きながら、化粧室に向かう。
この人とこうやってしっかり話すのって、実は初めてですね…

『ちょっと…最近経験した怖かった事を思い出してしまって、驚いただけなんです…』

そう、襲われるまで気が付かなかったストーカー事件のこと…。
知らない人に一方的にもたれる好意に、少し嫌悪と恐怖を感じてしまった。

「そうでしたか……恐怖は直ぐに克服できるものではないですが、次第に和らげることはできます。貴女が信頼する人と過ごしていくうちに。…心配しすぎない様に」

この人も哀ちゃんのいうような、笑顔の胡散臭い人、に入るのだろうけど、どこか少しだけ透くんと似通った部分がある様に感じる。
ハッキリとはわからないのだけれど…
本当は優しい人ということだけはわかってきた気がします。

『ありがとうございます。じゃあ、いってきますね。手をめちゃくちゃ洗ってきます！』

「いってらっしゃい。ここで待っていますから」

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