【三人称】今夜はあなたと【短編集】 (ページ29)

今日:8 hit、昨日:2 hit、合計:10,510 hit

3 ページ29

もしかして、私はずっと鉄塔さんが好きだったの？
自分の思いに気付かないなんて、そんな少女漫画の鈍感なヒロインみたいなことある？？

『鉄塔さん…』

優しくてカッコイイ鉄塔さん。小さい頃からお世話になってる、大好きなお隣さん。そんな人に恋をしてしまったのか。
好きだと気付いてしまった途端、思いが溢れてきた。あぁ、本当に好きなんだと確信してしまう。

『どう考えても親子の年齢差だよ…』

こんなにも絶対叶わない恋、他にないだろと思う。
年齢差もそうだけど、鉄塔さんに恋人ができたなんて話を聞いたことがない。それに鉄塔さんは一人が好きと言っていたから尚更。

『そもそもこんな子供を好きになるはずがないんだよなぁ…』

鉄塔さんから見たら、私なんて魅力のない子供だ。女として見る訳がない。叶わない恋をしてしまうとは馬鹿すぎる。

『…でも当たって砕けたい』

私はやらないで後悔するよりやって後悔したいタイプだ。鉄塔さんを驚かせてしまうし困らせてしまうかもしれない、でも内に秘めておくなんて無理だ。

『うん、伝えよう』

一人で勝手に覚悟を決めて鉄塔さんを待った。
しばらくして鉄塔さんが戻ってきた。

「お待たせー」

『洗い物ありがとうございます』

「そんな大したことじゃないよ笑」

謙遜してくしゃっと笑う顔を見て、やっぱり好きだとまた確信した。

『…あのね鉄塔さん、伝えたいことがあるの』

「ん？どうしたの？」

私の言葉に姿勢を直す鉄塔さん。
あぁ、緊張してきた。

『私ね、ずっと気付かなかったことがあるの』

「気付かなかったこと？」

『きっと鉄塔さんを困らせちゃうし、叶わないってわかってるけど…でも伝えたいんです』

「…うん、じゃあ伝えてくれる？」

ゆっくり頷いて深呼吸する。
帰ったらベッドに飛び込んで思いっきり泣いて、そのまま寝てやろう。

『鉄塔さん、私…鉄塔さんが好きです』

真っ直ぐ目を見て言えた。
鉄塔さんは驚いた顔をしている、そりゃそうだ。
さぁ早く私を振って

「俺も好きだよ」

『…え？』

また緊急停止する脳。
鉄塔さんは優しく微笑んでいる。

『な、んで…？』

「恐ろしいよね、事件にでもなっちゃいそうだよ笑」

『いｯ、いつから？！』

「Aちゃんが中学を卒業する前くらいかな？」

『なんで、だって私子供だよ？！』

「それを言ったら俺だっておじさんだよ？笑」

鉄塔さんはまた優しく笑った。