【三人称】今夜はあなたと【短編集】 (ページ27)

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【鉄塔】　お隣さんページ27

『おはようございます、鉄塔さん！』

「Aちゃん、おはよう」

8時10分。学校へ向かうために家を出る。
そしてお隣さんの鉄塔さんと挨拶をする。これが私の日常。

「今日も部活あるの？」

『はい、もうちょっとで完成しそうなので！』

文化祭に向けて美術部みんなで作品を作っている。結構大きいけどあとちょっとで終わりそう。

「そっか、頑張ってね」

『うん！いってきます！』

「いってらっしゃい」

鉄塔さんは、私が小さい頃からずっとお世話になってたお隣さん。
私が生まれてすぐこのマンションに引っ越してきて、私が赤ちゃんの頃から知ってる。

両親が共働きで、よく保育園のお迎えをしてもらってた。帰りが遅い時はお家にお邪魔した。
20歳以上離れてるけど、お兄ちゃんみたいな存在だった。

『やば、早くしなきゃ遅刻する！』

のんびり歩いてたら遅刻しそうになって、慌てて足を早めた。
ギリギリセーフで学校についた。間に合った…

「ここの問題は…」

授業中、教室に先生の声とチョークの音だけが響く。
苦手な数学の授業だから内容が頭に入ってこない。
早く部活に行きたいなぁとか考えながらノートをとる。

長いはずの授業はいつの間にか終わって、放課後。部室に向かう。
文化祭の作品制作はかなり進んで、来週仕上げをすれば完成というところまで来た。

『よし、来週で完成させよう！みんなお疲れ様！』

「お疲れー」

「お疲れ様〜！」

解散して帰路に着く。肌寒い風に足を早めた。
マンションの前まで来ると、見慣れた人影があった。

『あれ、鉄塔さん…？』

「お、Aちゃんおかえりなさい」

『どうしたんですか？こんなところで』

「実はお母さんに頼まれて…あ、LINE来てない？」

スマホを確認すると、確かにお母さんからLINEが来てた。

お母さんAごめんね、今日仕事が遅くなって家に何もないから鉄塔さんのとこでご飯食べて?

『ほんとだ…』

「ってことだから、申し訳ないけどうちでご飯食べてもらってもいい…？」

『全然いいですよ！むしろ鉄塔さんとご飯食べるの久しぶりだから嬉しいです笑』

「そう言ってもらえてよかった笑じゃあ行こうか」

にっこり笑う鉄塔さんに思わず私も笑った。
鉄塔さんの家行くの久しぶりだな…なんだかちょっと緊張するなぁ。

そんなことを考えながら鉄塔さんの横を歩いて家に向かった。