【三人称】今夜はあなたと【短編集】 (ページ20)

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【ドンピシャ】　喧嘩ページ20

ドンさんと喧嘩した。
理由は圧倒的にドンさん。

私の楽しみにしてた牛乳プリンを勝手に食べちゃうし、記念日を忘れてるし。

『あの牛乳プリン私のだから食べないでって言ったじゃん！！』

「ごめんって、忘れてて…また買うから！」

『そういうことじゃないの！それに、プリンのことだけで怒ってるんじゃないの！！』

そう言うとドンさんは首を傾げた。
やっぱり忘れてる、交際記念日のこと。

「他に怒らせることしたっけ…？」

『…ほんとに覚えてないの？』

「うぅ〜〜ん…な、なんかあったっけ？」

『はぁ？なんで忘れるの！！』

「そんな怒られても…言ってくれないとわかんないよ」

『ｯ…もういい、ドンさんなんか知らない！！』

「え、ちょ、A？！」

ﾊﾞﾀﾝｯ

耐えきれなくなってリビングを出て部屋に閉じこもる。
正直、怒りよりも悲しみの方が強い。

『毎年祝ってたのに…忘れないって言ったのに…っ』

思わず涙が込み上げる。
でもこんなことで怒る私の方が悪いのかもしれないと思い始める。

私って小さい女なのかな…

『ドンさん…』

ｶﾞﾁｬｯ

「A…？」

『ｯ…なに、入ってこないで…』

こんなことが言いたいんじゃない、ちゃんとドンさんと話したいのに…

悲しそうな顔をしたドンさんが静かに近付いてきて、隣に座った。
小さく心臓が跳ねる。

「A、ごめんね…」

『…何忘れたか思い出してから言って』

「ううん、違くて」

そう言ってドンさんが見せてきたのは、スマホと小さな箱。

『なに、これ…？』

「ここ…ちゃんと書いてあるよ？」

ドンさんが指さしたところには、カレンダーの今日の欄に予定が入っていた。

『…交際、きねんび…』

「ほんとはサプライズにしたかったんだけど…プリン食べたのが余計ダメだったね笑」

『っ…ごめん、なさい…』

「んーん、Aは悪くないよ！それよりほら、これ開けて？」

小さな箱にかかったリボンを解く。
そっと開けると、中にはリングが2つ。

『ドンさん、これっ…』

「ちゃんとしたやつじゃないけど…お守りと思って貰えたら嬉しいな」

ドンさんが小さい方を取り出して、私の左手の薬指に嵌めた。

「いつも困らせてばっかでごめん、これからもよろしくお願いします」

『っ…ばか、こっちのセリフだよ』

私もドンさんに、同じとこにリングを嵌めてあげた。
優しく笑うドンさんを見て、怒りはどこかに消えてしまった。