恋に溶ける_2 ページ2
デュースと並んでメインストリートを歩いていると、眠たそうな奴、朝から元気そうな奴が群れを成している。その隙間から、ちらりとAの姿を確認した。グリムの姿は隠れて見えない。
「A!」
オレの声に気がついたAとグリムが、手を振りながらこちらに向かってきた。
ふと、オレはAに何か違和感があることに気づいた。
「おはよう。エース、デュース!」
まっすぐな笑顔に違和感はない。だが、何かが引っかかる。
「おはようなんだゾ!何でオレ様だけことも呼ばないんだぞ!?」
「おはよう、グリムの姿は他の生徒に隠れていて見えなかったんだ」
デュース補足サンキュ。
ふわりと、朝の清々しい風がオレらを通り抜ける。
その瞬間、違和感の正体を突き止めた。
「A、前髪切った?」
ぽんと放たれたオレの言葉に、3人の動きが止まる。Aは動揺の色を見せた。
「よく気がついたね…?!」
驚きを見せつつも、先程と変わらない素直な笑顔が咲いた。
「ふな?何も変わってないゾ?」
「僕も気づかなかった…よく気がついたな」
デュースとグリムがAの前髪を注視し始める。
「毎日顔見てんだろ…」
呆れながら返すと、Aはふふっと声を溢れさせた。
「気づいてくれてありがとう、エース。」
その笑顔は、少し赤く染まっていた。
オレにはそれが眩しくて。チェリーパイに齧りついた時のような、やけに甘ったるいものが全身に広がった。
「お、おう…」
返答の仕方に困って次の言葉が出てこないでいると、グリムが口を開く。
「オレ様でも気づかなかったのに、エースお前子分のこと見すぎなんだゾ」
「はぁ?!」
オレの音量が思ったより大きくて、視線が集まる。
いやいやいや、んな訳ねーから!登校でも、クラスでも、移動教室でも、食堂でも3人と1匹で行動してんだから気づくだろ!
誰にも届かない心の声で強く叫ぶ。
「お、お前らが鈍いだけだろ、オレは先行くからな、朝限定パンのために先に行くからな!」
「ふなっ?!なんだそれ!待つんだゾエース!」
一息で言い切った後グリムの声を背に、食堂に向かう人混みを上手く通り抜けながら走る。
一気に駆け出したせいか、心臓がバクバクと大きくバウンドしている。
オレの中の違和感が、からかうように笑った。
【イメージソング・メルト】
16人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぱるこ | 作成日時:2020年9月21日 23時