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目の前で鬼の首がすぱりと切られ、鬼の体はその場に崩れ落ちた。

「…ぁ」

目の前にいたのは、紛れもない不死川くんだった。

「あぁ!!!首が!!!!首がぁぁぁぁ!!!」

「さっさと消えろ」

不死川くんは鬼の頭と体を森の方へ蹴りあげた。

「しな、ず」

「よく頑張ったなァ」

彼は崩れた私の体を抱きしめ、背中を叩いてくれた。それだけでも、嬉しかった。

「口開けろォ」

不死川くんがポケットから取り出した解毒剤を私の口に流し込み、無理矢理飲ませた。

「あり、がと、う」

吐き気を伴った痺れる体は動かない。薬は直ぐに効きはしないし、多分医務室送りだ。

「ほら、捕まれェ」

不死川くんは私の腕を掴み、私を横抱きにした。



彼の匂い、温かさ、そして優しさは



全て私に向けられた物であってほしいな。



「情け、ないなぁ。ど、うきに、たすけて、もらっちゃ、て」

「喋るなァ。辛いだろォ」

あぁ、貴方は本当に優しい。



だから、私の心からも離れないんだ。



「…不死川、くん」

「…なんだァ」

「ありがとう」

「…あァ」

彼の腕の中で、私は眠ってもよいのだろうか。

…いいか。

考える余裕もなく、私は夢の中へと落ちていった。


━━━━━━━━━━━━━━━


気がつけば、馬車の中にいた。

隣には不死川くんがいて、眠っていた私に肩を貸してくれているようだった。

「…ふあぁ」

「起きたかァ」

「うん。おはよ」

今、きっとすごく幸せだ。

好きな人の肩を借り、そして私の頭の上に頭を置かれている。

これ以上の幸せなんてあるのだろうか。

「…なァ」

「…どうしたの?」

「…………」

彼は暫く黙り込み、息を吸って吐いた。




「…『A』って呼んでいいかァ」




断る理由など、どこにも無い。

「…うん。いいよ」

「ありがとうなァ」



「…『実弥』くん」



「…あァ、そう呼べェ」

「…ありがとう」

嬉しかった。

彼の名前が呼べて、私はもう幸せの頂点にいた。

揺られる馬車に好きな人と乗りながら肩を貸し合うなんて、出来るとも思わなかった。


ねぇ、





貴方を好きでよかったよ。

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作者名:すいへ | 作成日時:2021年8月17日 22時

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