拾禄 ページ16
「美味しかったねぇ」
「舌がすげェピリピリしたわァ…」
「そのうち慣れるって」
私たちは喫茶店から離れ、宿泊の予約をとっていた旅館に向かった。
「不死川様、でよろしいでしょうか?」
「あァ」
「かしこまりました。お部屋にご案内致します」
和の雰囲気がありふれているこの旅館は、歩く度に桐の匂いが漂ってくる。
「お部屋はこちらでございます。なにか御用がありましたら、いつでもお呼びください」
「案内、ありがとうございました」
女将さんらしき人は少し驚いた後、にこりと微笑んでその場を去った。
「さ、部屋の中見てみよ!」
「あァ」
鍵を回し、靴を脱いで部屋の中へと入った。
「うわあぁ!ひろーい!」
窓からは綺麗な町の景色が見え、部屋の雰囲気も温かい。私が大好きな部屋だ。
「ね!実弥くん!すごいよね!」
「ハハ、はしゃぎすぎだろォ」
「だって隣町にこんなすごい旅館があるなんて思わないじゃん!?」
「雰囲気は最高だなァ」
「やっぱそうだよね!実弥くんなら分かってくれると思ってたよ〜!」
無理矢理同意させた感が垣間見えたが、彼もそう言ってるしそうなのだろう!気にしない!!
「そろそろ夜食の時間かなぁ」
「かもなァ。腹減った」
「アジの開き食べたいな」
「もうちょっとなんかなかったのかよォ」
扉の奥からノック音が聞こえ、夜食の時間だとはしゃぎまくった。
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「なんであんな良い旅館を出て鬼狩りなんてしなきゃなんないの…」
「仕方ねェだろォ」
私たちは旅館を出て、情報のあった商店街へと向かった。
実際に見てみれば本当に不気味で、すごく暗い。鬼以外も出るんじゃないのってぐらい暗い。
「…やっぱ帰らない?」
「駄目だ、行くぞォ」
「えぇぇ…」
「俺が守ってやらァ」
「…むり好き」
「…前向いてあるけェ」
こんなにも怖い雰囲気に打ち勝つぐらいの私たちの雰囲気って最強じゃない?()
「……止まって」
そんなことを思っていたら、鬼の気が強くなった。
「…あァ、俺でもわかるわァ」
実弥くんは刀を抜き、戦闘態勢に入った。
「…一匹だけ、気は緩めないで」
「わかってらァ」
私も刀を抜き、いつ来ても、どこから来ても大丈夫なようにする。
「…くる」
そう言った瞬間、鬼が上から飛び出してきた。
しかも、今一番見たくない顔の鬼が。
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作者名:すいへ | 作成日時:2021年8月17日 22時