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「事実かどうか知らないって……。じゃあ、そんなデタラメを言わないでくださいよ」

「これを言い始めたのは私じゃないのよ?」

「……じゃあ誰なんですか」

眉を顰めたまま少年は女性に問いかける。

少年は一瞬でも女性の話に怯えてしまったことが悔しかったのだ。

女性はそれを見て楽しそうに笑う。

「ふふ、貴方は知らない?梶井基次郎って人」

「……名前くらいは知ってますよ。この明治の世を生きる小説家ですよね」

「そう。その小説家のとある作品の出だしで、【櫻の樹の下には屍体が埋まっている】って書いてあったのよ」


「……物騒ですね」


「そう?私は凄いって思ったの。
だって……桜がなぜこんなにも綺麗なのか。
梶井基次郎はその理由を考えた結果、

桜の木の下に死体があるからだ。

って結論づけたのよ。
私びっくりしちゃった。どんなに醜い死体でも桜を綺麗にすることができるのね」

彼女は変わらず楽しそうに笑う。

それに同調するかの様に、桜の花びらは彼女の周りをひらひらと踊るように落ちていた。

「……貴女は変わった人ですね」

少年はやれやれ、といった様子で発言した。


「変わった人って褒め言葉よ。私、他の人と変わらないありきたりなんて嫌だもの」



一瞬。少年には女性の瞳に影が入ったように見えた。

「……?」

「それに、変わった人って言うのはお互い様じゃない?夜遅くにこんな人気のないところに来る貴方も変わってるわ」

そう言って女性は少年の格好をまじまじと見る。

「……貴方、書生服着てるし学生なんでしょう?だめよ、子供が夜中に外を歩いちゃ。家族の方が心配するわよ?」

その言葉を聞き、少年の表情が変わる。

悔しそうな、怒りの籠っているかのような……そんな微妙な表情。

「……残念、僕には心配してくれる家族なんていません。僕は愛されてないんですよ。あの人達にとって僕は邪魔者なんです」

「……そう」

女性は一瞬悲しそうな表情をした。


そして口を開く。








「……なら私が貴方の家族の代わりに貴方を心配してあげるわ。家族の人が起きる前に……帰りなさい」




「……え、」

女性の言葉に、少年は目を見開いた。

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偉人 - この占ツクにこんな素敵な文章を書く方がいらっしゃるなんて…この作品に出会えてよかったです。 (2020年9月5日 16時) (レス) id: 071f62e8cb (このIDを非表示/違反報告)
メビウス(プロフ) - なつかさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただいて本当に嬉しいです!!今作品も最後まで好きって言って貰えるように頑張ります!! (2019年3月25日 20時) (レス) id: 75ad7ad27c (このIDを非表示/違反報告)
なつか - 前の作品もこの作品もすごく好きです!頑張って下さい! (2019年3月24日 18時) (レス) id: d7e54bb1e1 (このIDを非表示/違反報告)
メビウス(プロフ) - 世理さん» コメントありがとうございます!!「新作」って言ってくださるってことは、過去の作品を見てくださっているんですね!凄く嬉しいです(∩´∀`∩)ワーイ!頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年3月21日 0時) (レス) id: 75ad7ad27c (このIDを非表示/違反報告)
メビウス(プロフ) - 寧々さん» コメントありがとうございます!!これから亀更新になるかもですが、暖かく見守ってください笑 (2019年3月21日 0時) (レス) id: 75ad7ad27c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:メビウス | 作成日時:2019年3月20日 1時

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