検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:18,202 hit

1頁 ページ2

舞台は明治時代の東京。



とある丘の上に、1本の大きな桜の木があった。

街から離れたところにあり、その丘へ足を運ぶ人はない。

丁度季節は春で、桜はひっそりと綺麗に咲いていた。




「はぁ、はぁ…」

その桜の木の元へ1人の少年が辿り着く。

書生服を着ているところを見ると、彼は学生なのだろう。

その時の時刻は丑三つ時。現在で言う深夜2時頃だ。

「こんなところに……桜の木が……」

少年は丘の上に来るのは初めてで、綺麗に咲き誇る桜に目を奪われた。


「……綺麗だな」

桜の花びらが彼を歓迎するようにヒラヒラと舞い落ちる。


「……桜よ、僕を受け入れてくれるんですか。……ありがとうございます」

そう言って彼は落ちる花びらを手に乗せる。

見ると花びらには色味がなかった。

「…ここの桜は白いですね」

ポツリと少年は呟いた。





その瞬間。









「この桜の下にはきっと死体が埋まってないのね」









「……っ!?」

女性の声が聞こえた。

鈴の鳴るような綺麗な響く声。

少年は驚き、声のする方を向く。





「…ふふふ、びっくりした?」


そこには着物を身にまとった黒髪の女性がいた。

舞い落ちる花びらを背景に、ふわりと彼女は笑う。



「え、あ、……」

「あぁ、安心して?いくら今の時刻が物の怪の出やすい丑三つ時だからって、私はちゃんと生身の人間よ」


女性がそう言うと、少年は小さく安堵の息を吐いた。




「……さっきの……死体ってどういうことですか……」


「死体の話気になる?」



「……あの流れで気にするなって方が無理ですよね」

少年は少しムスッとした。

それを見て女性は「ごめんごめん」と笑う。



「桜って綺麗な桃色をしているでしょ?それって、桜の木の下に死体が埋まっていて、その死体の血を吸い上げているから花びらが桃色に色づくの」

「……」


「この桜の花は白いでしょ?だからこの桜の木の下には、桃色の元となる死体がないんだなって思っただけ」




その話を聞き、少年は眉を顰める。

「それって事実ですか?」

事実だとしたら。そう考えただけで少年は身震いをする。



「んー、どうだろうね?事実かどうかは知らないや」


また彼女はふわりと笑った。

2頁→←プロローグ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (63 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
79人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

偉人 - この占ツクにこんな素敵な文章を書く方がいらっしゃるなんて…この作品に出会えてよかったです。 (2020年9月5日 16時) (レス) id: 071f62e8cb (このIDを非表示/違反報告)
メビウス(プロフ) - なつかさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただいて本当に嬉しいです!!今作品も最後まで好きって言って貰えるように頑張ります!! (2019年3月25日 20時) (レス) id: 75ad7ad27c (このIDを非表示/違反報告)
なつか - 前の作品もこの作品もすごく好きです!頑張って下さい! (2019年3月24日 18時) (レス) id: d7e54bb1e1 (このIDを非表示/違反報告)
メビウス(プロフ) - 世理さん» コメントありがとうございます!!「新作」って言ってくださるってことは、過去の作品を見てくださっているんですね!凄く嬉しいです(∩´∀`∩)ワーイ!頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年3月21日 0時) (レス) id: 75ad7ad27c (このIDを非表示/違反報告)
メビウス(プロフ) - 寧々さん» コメントありがとうございます!!これから亀更新になるかもですが、暖かく見守ってください笑 (2019年3月21日 0時) (レス) id: 75ad7ad27c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:メビウス | 作成日時:2019年3月20日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。