ジキルとハイド［ワールドトリガー］ (ページ9)

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ウィーン

無機質な機械音と機嫌の悪い足音が同時に響いた。

「え、なになになに、」

自分の作戦室のソファーでスマホをいじっていた菊池原は唐突に現れたAに驚いた。

こわばった顔で菊池原に詰め寄った彼女は、普段よりさらに低い声を出した。

「蒼也は？」

「風間さん？

さぁ、さっきまでそこにいたけどトイレかなんかじゃない？」

「さっさと蒼也出してよ！！」

「だから、どこにいるか知らないって･･･！」

はやく出せ、

そう大きな声で繰り返す彼女に奥の部屋にいた三上はあわてて飛び出てきた。

「Aちゃん、落ち着いて！」

「ねぇ！！蒼也どこ！！？」

人畜無害なやさしい笑みでも、なにも感じていない光のない真顔でもない。

なにかに追われているかのように恐怖を露わにし、背中をさする三上の声ですら聞こえていないようだった。

「菊池原くん、隊長に電話して！」

「はい。」

菊池原がもっていたスマホの通話アプリを起動したとき、彼女が待っていた人物がやってきた。

「A！？」

「蒼也！！」

三上から離れ勢いよく風間のもとに飛んだ彼女は、風間に殴りかかりそうな勢いだったが、意外にも彼女は風間の腕の中に飛び込んで大人しくなった。

「A？」

「帰ってくるって言った。

ちょっと遅くなるって言った･･･！！

なんで進兄も蒼兄も約束守んないの！！？

Aずっと待ってたのに･･･、」

風間は赤子のようにしゃくりを上げて泣き始めたAをやさしく抱きしめた。

久しぶりのそのぬくもりに彼女は安心して目を閉じた。

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