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「有郷隊員。」

「なんでしょう、城戸司令。」


薄暗い部屋で、

ボーダーのトップ城戸司令を中心とした上層部のメンバーがAの前に揃っていた


「迅隊員が保有していた(ブラック)トリガー、風刃を次期起こる近界民による大規模侵攻で使用してほしい。」


迅が遊真と引き換えに黒トリガーを本部に手渡しことをAは事前に聞いていた

しかし、風刃の使い道は一隊員に過ぎないAには詳しく明かされていなかったし、

A自身それほど興味も無かった


だが、自分が使うとなったら話は別だ

無理矢理にでもそちらに興味を持たなければならないし、

上層部全員がこの場にいるということは、

これは城戸の独断ではなさそうだ


詳しく話を続けようとした城戸の声をAは一言で遮った


「お断りします。」

「なぜだ。」

「私には風刃は使いこなせません。

もっと他に適任がいるはずです。」

「有郷隊員の武器への適応能力はかなり高いと様々な方面から評価されている。

それにこれは迅隊員や忍田本部長、林藤支部長の意見を取り入れての提案だ。」

「提案、ということは断ることも可能なはずです。」


頑なに頷こうとはしないAに上層部の面々は驚きを隠せない

話はもっとすんなり通ると思っていたようだ


「城戸司令。

私はこの組織の派閥争いなどは微塵も興味はありません。

しかし、司令の行った空閑遊真に対する強行作戦には些か疑問を抱えるところがございます。

もしどうしても私に風刃を使わせたいのなら、

風刃が" そちら側 "に渡った理由を私が納得するように説明してください。」

いつになく真剣な表情に部屋の温度が下がる

「わかった。

有郷隊員の風刃候補は辞退ということにしよう。」

「話が早くて助かります。」

ニコッとあからさまなつくり笑顔を浮かべたAは、

出口に向かって足を進めた。



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作者名:名もなきもの | 作成日時:2021年2月22日 7時

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