Venom ページ5
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「しゅーじくん。」
「・・・有郷先輩。」
基地の屋上
真冬のそこは強い風が吹いており、リラックスできる環境とはとても言い難い
「寒くないの?」
「なにか用ですか。」
「そんなに警戒しないでよ。」
眉間に深い皺を刻んだ三輪にAはおちゃらけたように笑った
「しゅーじくんに用はないよ。
ちょっと気分転換に屋上来てみたらキミがいただけ。」
「・・・中に戻ります。」
「そう?」
別にいいのに。
そこまで引き止める気のない返事に三輪は立ち上がった
それと入れ替わるようにAが建物の淵に座った
「落ちないでくださいよ。」
「心配してくれてるの?
やーさしー。」
「基地で死亡事故なんて縁起が悪すぎます。」
「大丈夫だよ。
地面に着く前にトリガーオンするから。」
彼女はポケットの中から長方形状の機械を取り出した
「有郷先輩は、近界民を恨んでないんですか?」
本当は聞くつもりではなかった。
ただこの人は
近界民に対して恨みを持つ俺にも、
近界民を受け入れる玉狛の人間にも、
同じように無邪気に笑う。
その笑みにはあまりにも上手に自分の本心を覆い隠しているように見えた。
この人自身近界民に酷いことをされたのに。
「恨んでる、というかちょっと怖い、かな。
でも、私は今ここにいれるだけでそれでいっかって思えちゃうんだよね。
私結構楽観主義だから。
しゅーじくんみたいに大切な人を亡くしたわけじゃないしさ。」
「そう、ですか。」
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作者名:名もなきもの | 作成日時:2021年2月22日 7時