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「変わっちゃったのよね、あの子のお母さん。

お父さんが亡くなってから会社は倒産寸前。

会社が倒産すれば莫大な借金が降り掛かる。

それを阻止するために悲しみに浸る間もなく働き続けたせいか、

心が壊れちゃったの。」


そんな母親を見てAは知ったのだ。

人は変わる。

そのきっかけは重くても、軽くても。


そして一度変わってしまった人間を元に戻すことは難しい。


自分が人を変える引き金(トリガー)となってしまうのなら、

関わらない方が幾分かマシである。



「あたしも何回か会ったことがあるんだけど、

優しくて穏やか。

こどもたちのことをいつも優先している母親の鑑みたいな人だったのに。」


いつからか仕事のストレスは子どもたちに向くようになった。

蹴られ、殴られ。


自分が人を変えてしまうなら関わらない方がまし、

そして、自分が傷つくなら尚更だった。


いつしかAは心を閉ざすようになった。

明るかった笑顔は消えていった。

しゃべるときに考えながらしゃべるようになった。

言葉は途切れ途切れにしか出てこなくなった。


他人を変えないように関わらなくなったはずが、

自分が一番変わってしまったのだ。



「あの日からずっと進めないのよ。

あの子も悠人もあの子たちのお母さんも。

誰を頼ればいいのかわからず、

ずっとひとりぼっちのまま、そこにいる。


あの子たちを心配している人たちはこんなにたくさんいるのにね。」




寂しそうに呟く小南の頭に写るのは、

あの日の明るいAの笑顔。




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作者名:名も無き者 | 作成日時:2021年2月7日 23時

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