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その人は左手でおじさんを拘束しながら、

右手で私のお腹らへんを捕まえて支えてくれた。


「す、すいません。」

「大丈夫?

顔、真っ青だけど。」

「大丈夫です。」

すいません、ともう一度頭を下げる。

大丈夫なんて偉そうな口を叩いたけど、

実際はこの人の支えが無かったら今にも倒れてしまいそうだった。

そんな自分が悔しくてグッと唇を噛む。


「もうすぐ着くからちょっと待ってね。」

「はい。」


プシューと開いた扉に向かって人が大勢出て行く。

その流れに乗って私たちも外へ向かった。



「黒尾さん!」

「おー、赤葦ちょうどいいところに。」

外の空気を吸い込んでぐったりしていると、

これまた長身の眼鏡を掛けた男性がやってきた。


「おんなじ車両だったんで見てました。」

大丈夫ですか?と、その人に顔を覗き込まれて必死に顔を前後に振る。


「ちょっと、この人の手持っといてくんない?」

「いいですよ。」

左手にいたおじさんを" アカアシ "と呼ばれた人に託した。

「お嬢さん、会社に電話しとかなくて大丈夫?」

「あ、しときます。」

カバンの中からスマホを引っ張り出し、まずスケジュールアプリを開いて午前中に大事なミーティングがないか確認する。

それから電話帳を開いて先輩に電話をかけた。


「もしもし、柊木(ひいらぎ)です。」

『あ、柊木ちゃん?

おはよー、どーしたの?』

「実は痴漢に遭って今からちょっと話に行くんで仕事遅れます。」


はい、はい、と会話していると後ろからするりとスマホを奪われた。


「すいません、私今たまたま電車で居合わせた者なんですけど、

かなり体調が悪そうなのでこの後病院に連れて行こうと思っているんですけどこの子に休みもらえることってできますか?

はい、

すみません、じゃあよろしくお願いします。」


そう言って通話を終了させたその人は私に携帯を返した。




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Shuka(プロフ) - また次回作も楽しみにしています! (2021年1月18日 7時) (レス) id: e262deccef (このIDを非表示/違反報告)
Shuka(プロフ) - こんにちは。内容、文章の作り方、クロの話し方、主人公の気持ちの書き方等見ていて全て好みでこんなに作品にのめり込める短編は無いなと思うくらいでした。普段長編の方が好きで短編は全く読まないし推しは研磨ですが何故か惹かれ呼んだら素敵な作者様に出会えました。 (2021年1月18日 7時) (レス) id: e262deccef (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜色(プロフ) - 面白そうです。頑張ってください! (2021年1月17日 9時) (レス) id: de5cad5b88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名も無き者 | 作成日時:2021年1月17日 8時

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