｜🚪🫧 ページ21
.
「ちょっと待ってて！」
私たちにそう言って鈴芽は部屋を飛び出し、階段を降りていった。鈴芽がいなくなり、しーんと静かになる部屋。視線を仔猫に戻し、よしよしと優しく頭を撫でる。と、ゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らして、すりすりと擦り寄ってきた。
『君は偉いねえ、頑張って生きてきたんだね』
こんな姿になるまでどれくらいの苦痛にあっただろうか。動物って、ほんとすごい。そう思いながら、目を細めて気持ちよさそうにする仔猫を見つめる。すると、鈴芽が両手に煮干が入った小皿と水が入った小皿を持って、階段を昇って戻ってきた。
一目散に仔猫の元へやってきて、ことっと窓際に置いた。仔猫は私の手から離れ、すんすんと匂いをかぎ、慎重にひと舐めし、それから食べれるとわかれば、がつがつと食べ始めた。
「相当お腹すいてたのねえ……」
『にしても、このあたりでは見かけない仔猫ちゃんだよね』
「うん」
鈴芽と一緒にあばらの浮き出た体を眺める。食事の邪魔にならないように、ゆっくりと小さな体を優しく撫でる。まるで脆いものを扱うように、そっと。すると、鈴芽は「ねえ」と、幼い子に話しかけるように、仔猫に問いかけた。
「君、もしかして地震で逃げてきたのかな。大丈夫？怖くなかった？」
「にゃあ」
「かわいっ！」
その問いかけに仔猫は顔を上げ、鈴芽の顔をまっすぐに見て答えた。なんてけなげなのっ！と鈴芽は頬を緩める。草太お兄さんも隣で微笑んでいる。思わず鈴芽と私は仔猫に声をかけた。
「ね、うちの子になる？」
『もう鈴芽ったら！君は私の子になりたいよね？』
「うん」
『「え？」』
返事があった。思わず撫でていた手を仔猫から離す。ビー玉みたいな黄色い目が、じっと鈴芽を私を見つめていた。枯れ木のように痩せていたはずの仔猫の体が、いつの間にか大福のようにふっくらと肉付いてる。耳がぴんと立っている。
ちりーん。思い出したように、鈴芽の風鈴が鳴る。白い毛に覆われた小さな口が、開く。
「すずめとA やさしい すき」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 324人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なのは菜(2)(プロフ) - 松前菊さん» 松前菊様コメントありがとうございます！そう言ってもらえて嬉しいです！応援ありがとうございます！更新頑張ります！ (2022年11月14日 22時) (
レス) id: 5f9e90fef5 (このIDを非表示/違反報告)
松前菊(プロフ) - なのは菜(2)さんの作品、とっても好きです！是非、頑張って下さい！応援させていただきます！ (2022年11月14日 21時) (レス) @page10 id: 4c0d3a01c3 (このIDを非表示/違反報告)
なのは菜(2)(プロフ) - せいなさん» せいな様コメントありがとうございます！嬉しい出会いに感謝ですね！更新頑張ります！ (2022年11月13日 23時) (レス) id: 5f9e90fef5 (このIDを非表示/違反報告)
せいな(プロフ) - 初コメ失礼します！すずめの戸締りの夢はないのかだって探してた時にこの神作と出会えました！更新頑張ってください！ (2022年11月13日 22時) (レス) @page6 id: d75ed684d2 (このIDを非表示/違反報告)
なのは菜(2)(プロフ) - ゆらさん» はじめまして！ゆら様コメントありがとうございます！わあ、こんな作品を見つけていただきありがとうございます！そう言ってもらえて嬉しいです！応援ありがとうございます！更新頑張ります！ (2022年11月13日 18時) (レス) id: 5f9e90fef5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なのは菜 | 作成日時：2022年11月12日 22時
