20 ページ20
-北斗side-
｢んで？あれからAちゃんとはどうなの？｣
｢いやそれがさ、たぶん避けられてんだよね…｣
｢マジ？なんかしたの？｣
｢…俺が飲みすぎたかも｣
Aと樹のお店にごはん食べに行ったっきり予定が合わず、会えなくなっていた。久しぶりに休みが被った樹と飲んでるけど、話題はAのことが主題らしい。
｢なに？飲みすぎてなんかやっちゃった？｣
｢んーいや…ほんとあんま覚えてないのよ｣
｢は〜、おまえそれぜってぇなんかしてるよ｣
それは困る。まだ自分の気持ちも言えてないのに、ベロベロに酔った俺のせいで、また会えなくなるのは本当に落ち込む。でも俺の中で認めたくなかったことを樹が言葉にすることで、現実味がぐっと増してくる感覚。
｢んも〜飲めって！嫌われたって決まったわけじゃないし！そん時は慰めるし｣
沈みきった俺の顔を見て励ましてくれる樹だけど、核心ついたのはあなたですからね。ましてや『そん時』が来てしまうのも困る。『北斗からも連絡してみろって』の樹の言葉にAとのトーク画面を開いたけれど、嫌われてるかもしれない俺からの誘いは迷惑じゃないだろうか。そもそも俺から誘ったりメッセージ送ることってほとんどないから、なんて送ればいいのかすら分からない。スマホを持ちながら難しい顔で悩んでいると、スっと樹にスマホを取られた。
｢い、ま、な、に、し、て、る、？これでいい？送るよ？｣
｢いや、待ってって｣
｢はい、OK〜｣
樹から返されたスマホ画面を見ると、送信済みのメッセージが表示されていた。まだ未読だし、今消せば無かったことになるって思って慌てて送信取り消しボタンをタップしようとしたところで『既読』の文字。
｢樹！既読になったじゃん！｣
｢声デカっでも良かったじゃん、ブロックされてなくて｣
いやまあ、それはそうなんだけどさ…。送信取り消しを押そうとした指を止めて、Aからの返信を待つ。卒業シーズンで居酒屋内が賑わっていて良かった。俺の心臓の音が周りに聞こえてしまうのでは、って心配になるほど心臓がうるさい。
シュポッという音とともに『死にそう』の文字。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 938人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふわり | 作成日時：2023年3月10日 19時
