ほろよいリスタート (ページ16)

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ｰ北斗sideｰ

Aに会えなかったこの3年間、溺れたみたいにつらかった。卒論の期限を迎えてゼミが終わってから喪失感というか、ずっと心にぽっかり穴が空いてしまったみたいで。最初は卒論から解放された燃え尽き症候群みたいなものかと思っていたのに、なにをしても心が埋まらない。なんか焦ったような感情になることが多くなっていて。卒業式の前日、教授の部屋に本を置きっぱなしにしていたことに気づいて取りに行くと、数週間ぶりに会うAがいた。

そこで、かな。初めてこの気持ちに名前がついたのは。俺はAに会いたかったんだね、会うことが当たり前ではなくなったのが寂しかったんだねって心の隙間にひとつずつ恋愛感情が当てはまっていった。あの時『ほくとくんも忘れもの？明日、写真撮ろうね！』と俺に笑いかけるAに、ちゃんと返事は出来ていたのだろうか。ちゃんと笑えていなかったかもしれないね。なんでもっとはやく気づけなかったんだろう。もう明日で会う口実なんてなくなる、ほんとに他人になってしまうのに。

卒業式の日にゼミメンの3人で写真を撮ったのを最後に、会うことは本当になくなった。だって誘うのも変でしょ。ただの同じゼミにいただけで、3人で飲みに行くことはあっても卒論関係のことじゃないと2人っきりで会うことは無かったし。

卒業後に俺がウジウジしている間にAのLINEが画面から消えた。『メンバーがいません』表記になっていてどこを探してもいなかった。…本当に終わったんだ。これでもう二度と会えなくなったんだ、って。こんなことなら伝えてから終わりたかったって何度後悔したか分からない。

…そうだよ、今なら伝えられるじゃんか。
俺の目の前にいるAに。