㉓ ページ31
.
『樹音遅くねー？』
そんな独り言を呟きながら、生徒玄関でいつもの様に樹音を待つ。
玄関外の柱にもたれかかりながらスマホを弄っていると、女子生徒が2人ほど駆け寄ってきた。
「あ、壮大先輩だ！｣
「壮大先輩！今日は1人なんですか？」
後輩の子だった。
『ううん、樹音待ってる』
「そうですか……ダンス教えて欲しかったな〜」
「ね〜｣
なんて上目遣いで言ってきた。
そんな事して許されるのはA以外居ないんだけど、何してるんだろう。
『ごめん、樹音と入れ違いしたら嫌だからさ、また今度な』
「えぇー……わかりました、今度楽しみにしときます！」
「その時は私もお願いします！｣
『うん。じゃあ』
「じゃあ、樹音先輩が来るまで一緒に居ていいですか？」
は？
脳内で自然とその文字が浮かび上がった。
この後輩と一緒に居るとこをAに見られて、Aになんか勘違いされて、俺に彼女が出来たとかなんとか思われたりしたら……
最悪過ぎる。
『あー……』
どう返答しようか迷っていた時、俺が一番見たくない相手が見えた。
そいつの横にいる人物は、俺には見覚えがあった。
部活が同じの後輩、竜平だ。
竜平とあいつ、仲良いのか？
話の内容が、少しだけ聞こえてくる。
「竜平今日部活無いの？」
「毎週水曜は休みってなってる。自主練で行ってもいいけど、今日は早く帰ってきてって言われたから帰るだけ」
「へー」
「前言った気するけど」
これから2人で帰るっぽいな。
2人とも高一で同い年だから仲が良いのか？それとも同じクラスだから？
まぁこんな事どうでもいいので、直ぐに考えるのをやめた。
今はAと舜斗が一緒に帰らないって予測できたことだけでも嬉しい。
｢壮大先輩！｣
『ん、あ、うん、なんだっけ？』
「聞いてなかったんですかー？もぉ」
「えっとですね」とさっきしていたであろう話をまたしようとしているその時、俺の目に写ったひとつの光景で、もう俺の耳は機能しなくなった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 30人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鯖の味噌煮ちゃん | 作成日時：2024年3月3日 22時
