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絡繰SIDE
「どういうことだ」
「(めいは主の母の連れ子。だから普通の名前もあったし、当主の争いに入らなかった。めいは人形師だけど、魂魄人形を作ることが出来ない。…めいが家族だってことは睦月だけが知ってたんだって…言っていた)」
なるほどな、どうりでこんな変な所に連れてこられたわけだ。変な出会い方だとは思っていたけどあれは苦し紛れの言い訳みたいなものか。
…家族、な。一緒に暮らしていて居心地が良かったのは…兄だったから、だったんだな。
「(後…ね、このことは忘れろだって)」
「忘れろ?何でだ」
「(わからない。…でも、忘れてほしいみたい)」
忘れろって言われて簡単に忘れられるわけがない。…いや、無理矢理やれば出来るか。自分にかけたことないけど、…やってみる価値はある。めいとの記憶を消したくなんてないけどな。
「…わかった。でも、最後にお別れだけ」
俺はめいの死体に手を合わせ、抱きしめた。服に血が付くことなんて構わない。少なくとも俺はめいが好きだった。優しくて暖かいこの人が…、好きだった。別に恋愛感情じゃない。
亡くしてしまうのは…避けたかったな。
「…もういいか。メイデン、“戻れ”」
「(…わかった)」
「…これ以上記憶なんて…消したくねぇよ。…ただでさえ俺は死んでいろいろ失ってるのに」
ゆっくりと息を吸って吐く…、覚悟を決める。
「“消えろ”」
俺は意識を失った。多分目覚めた頃にはめいのことを全部忘れているだろう。
一つ聞きたい、めい。
(なんだ)
どうしてお前を…忘れなければならない。
(俺が……)
この先の言葉は何も聞き取れなかった。見えていた幻覚も消えた、もう思い出せない。…声も、匂いも、顔も。嫌…だな。
忘れたく…ない。
瞑…理…。
「ッ!?」
なんで俺は寝ていた。…あ、そうか。死んで兄に置いてきぼりにされたんだ。…でも兄はどうしてこんな廃村を選んだ?しかも、目の前に知らない死体が置いてあるし。傑の残穢ばっかりだし。
「…よくわからないな」
誰だ…これは。…俺にとって何か…何か…。
「…チッ、変なことは考えたくない。戻ろう」
この死体よりも気になるのは傑の残穢だ。ここで何をした、一切人の気配がしないってことは傑が殺したのか?…でもなんで。
…傑…って、どんな奴だっけな。…死んだからあまり覚えてねぇ。
「でも…非術師は守るものじゃねぇのかよ」
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suffron*(プロフ) - 水野さんさん» コメントありがとうございます!めっちゃ嬉しい感想です!頑張って矛盾が起きないように頑張ります! (2022年8月8日 22時) (レス) id: 8634fbdb13 (このIDを非表示/違反報告)
水野さん(プロフ) - この小説、よく話が組み込まれていてすごい大好きです!これからも無理せず頑張ってください!💪💪💪 (2022年8月8日 21時) (レス) id: 67d79f5597 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:suffron* | 作成日時:2022年8月5日 12時