仕立て屋と反社【東リべ】【梵天】 (ページ16)

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白橋SIDE

　蘭さんを部屋に残してきて本当に正解だったのだろうか。私って案外押しに弱いんだな…。学生時代も全然浮いた話はなかったし、他の友達の恋バナを聞くだけで胸焼けがするほど男の人が苦手だった。

　…まぁ、私も色々あったからね。色々あったからこそ今こうやってこの仕事が出来てるんだけど。ヤバい男も普通に撃退してるしさ。

　「ありがとうございました」

　今日は少しお客さんが多めだった。でもオーダーメイドじゃなくてショーケースにあるスーツを買っていく人だけだったからそんな忙しくもなかった。もう閉店時間だ。店閉めよう。

　閉めた後、私は部屋に戻った。

　「……確かに何もしてないけれど」

　勝手にベッドを使って良いとは一言も言ってない。

　「蘭さん、起きてください」

　ペしぺしと頬を優しく叩いて起こそうとした。でも起きる気配はない、九井さんぐらい寝起きが良ければいいのに。多分悪い人だな、蘭さんは。無理矢理起こしたら殴られそう。

　「蘭さん、私この後も仕事するんです。だから起きてください」

　全く反応なし…、いい加減怒るよ。蘭さん。

　「あっちの方法を使うか」

　私は咳ばらいをし喉の調子を整えた。そして、蘭さんの耳元で囁いた。

　「蘭、起きて？」

　我ながら可愛い声を出せたと思う。気持ち悪いったらありゃしないけど。

蘭「ん～」

　「うわっ」

　手首を掴まれそのまま蘭さんの下敷きに。重い…。

　「起きてるじゃないですか。邪魔です、避けてください」

蘭「よくこの状態でそんな冷静でいられるね。いつ襲われるかわからないってのに」

　「前、俺は紳士だからそんなことしねぇって言ってましたよね？まぁ…もしこのまま何かしようというのなら今すぐにでも貴方をお腹を蹴り飛ばして無理やりにでも家から追い出します」

蘭「男の俺に力で勝てると思ってるんだ」

　いや、思ってない。隙さえ突ければどんなに相手が強くても拘束からは抜け出せる。でも…もし本当に襲う気なら私は多分何も出来なくなる。本気じゃないからこうやって見栄を張れているだけ。

蘭「俺、Aちゃんみたいな女に初めて会った。大体の奴はさ俺を顔だけで判断して猫撫で声で媚び売ってくんだよ。でもAちゃんは違う」

　彼の指が私の唇をゆっくりとなぞる。妖艶な笑みが月光に照らされてさらに色気を増す。

蘭「俺はいつでもお前を襲えるから」

　「…ッ…、その甘い言葉で一体何人の女性を落としてきたんでしょう」