５４．夢遊病 ページ7
花桐SIDE
悪夢…。
…溺れた夢を見た、底がなくて何処までも沈んでいく。水の中は暗くて冷たくて…寂しかった。私を上がらせないように足には人の手の様な植物が巻き付いていて怖かった。
「…助けて…」
自分の声で目が覚めた。
「はぁ…っ…、はぁ…」
何処…ここ。見たことある景色だけど…、思い出せない。…頭も痛いし…、汗びっしょり。
華「Aちゃん…、大丈夫？」
紫苑…？…あ、そっか、ここ紫苑の家だ。私倒れちゃったのかな…。
「頭痛いわ」
華「川に飛び込んだせいじゃないか？」
「…川…？」
華「覚えてないの？」
私が川に飛び込んだ…？そんな○殺行為するわけない。まさか…あの悪夢って夢じゃなくて現実…。でもそんな底なし川なんて近くにはないし…、夢と現実が混ざってたのかしら。
「あれは…夢じゃなかったってこと…？」
華「ッ！？…Aちゃん、一度病院行った方が…。もしかしたら夢遊病とかかもしれないし」
「…ううん、きっと大丈夫よ。今までにこんなことなかったから、多分昨日が疲れすぎていただけ。心配させてごめんね」
華「でもさ…」
「大丈夫だって！ほら、もう元気よ」
多少頭はまだ痛いけど…、昨日の疲弊に比べたら全然。精神的に疲れてしまったのもあったと思うし…。体と心、どっちかが崩れても駄目だからね。バランスよく休んでいかないと。
華「…ごめん」
「わっ…！」
いきなり紫苑が抱きついてきて二人でベッドに倒れた。
「紫苑…？」
華「今日だけは絶対安静。どこも行かないように見張っておく」
…あぁ、そういうこと。
「わかったわ…。…ところで、この服は？」
華「びしょ濡れだったから着替えさせた。それは俺のだけど、昔のだしまだ小さい方だから…」
よくよく考えてみると下着も着ていない状態…。紫苑のことだから変な気は起こしてないだろうけど…、ちょっと…恥ずかしいわ…。
華「顔真っ赤」
「そりゃあ…、いくら昔からの付き合いとはいえ…」
華「心配しなくても何もしてない。ほら、おやすみ。まだ体は全快じゃないんだから」
「わかってる…」
誰かに抱きしめられながら寝るなんて初めて…。こんなにも…温かいなんて。
優しい…。…けど、苦しい。
これが…ずっと続けばいいのに。続かないことを理解しているから…、余計に苦しい。
でも…、続かないってわかっていても…、
願うことぐらいなら…許してくれるでしょ？
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作者名：suffron* | 作成日時：2022年10月6日 16時
