５３．勘違い ページ6
華相SIDE
華「まだ…楽になってなかったじゃん」
あの時の相談は本音だ、それは間違いない。でも…その後の楽になったからって言う言葉は嘘だった…。俺は…それに気づけなかった。顔が見えないからなんてのは都合のいい言い訳。
「私は…」
Aちゃんは崩れるように膝をつき、水面を見つめている。溺れるほどの深さじゃなくて良かった…。焦った…。
「間違えちゃ…駄目…なのに」
これは俺の憶測でしかないけど…。
Aちゃんにとって両親の存在って凄い大きかったんじゃないかって思う。死んでよかった、殺してくれてありがとう、あいつらのことは嫌いだから…、本音じゃないことを口にして自分にこれは本心だと思い込ませている。
ずっとそうやってきたせいで、自分の本当の気持ちが段々わからなくなっていった。
もう一度言うけど、これは俺の根拠のない憶測だから。
華「Aちゃ…」
声をかける前にAちゃんはこっちを見た。気づかれたか…？
「……」
何も言わずに目を背けたということは…、多分気づいてない。
華「良かっ…」
「…たす…けて…」
ッ！？
倒れ…っ…、
華「Aちゃん！！」
俺は焦って土手に降り、そのまま川に飛び込んだ。今が秋で助かった、川の流れがそこまで速くない。
「ゲホッ！ゲホッ！…う…ッ…」
華「びっくりさせんなって…。死んだら嫌だよ」
俺はAちゃんを持ったまま川から上がり、顔と髪だけ一旦拭いた。
「ごめ……ね…、し…ぉ…ん…。…辛…い…よね…」
華「…ッ…」
ずっと勘違いしてた。
Aちゃんがあの時のことを忘れられないのは、親が大切だったからじゃない。
…俺に人を殺させたことを…後悔していたんだな。でも…どっちにしろ俺のせいであることに変わりはない。…ごめんな、ずっと…ずっと苦しい思いをさせて…。それに…気づけなくて…、勝手な思い込みで放っておいてしまった。
こんなんで…君を好きになったとか、おかしすぎて笑えてくる。
バイクを置いている所まで戻り、後ろにAちゃんを乗せ、押しながら帰った。今は…起こしたら駄目だ。せめて…夢に逃げられたら…。
家に着いた後は出来るだけ体を見ないように服を脱がせて自分のパーカーを着せた。まだ寒そうだな…。後は…毛布と…湯たんぽ…？
頭が働かない…。落ち着け…、俺。遅すぎたわけじゃないんだから。
「…私…は…」
“弱いなぁ”
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作者名：suffron* | 作成日時：2022年10月6日 16時
