８９．命日 ページ43
胡蝶SIDE ※多少時間は戻ります
今日は枳殻の親の命日だったらしい。墓参りの手伝いをしてほしいと頼まれ、特に断る理由もないからついていった。
胡「枳殻の親は病死だったのか？」
枳「どうなんだろうね…、気づいたら死んでた」
…？何を言っているのか俺には理解できない。葬式の時に死因は言われるはずだが。
枳「葬式には行ってない。そもそも親との記憶すらないから、何処に住んでいるのかわからなかったし…。死んだのは母親、父親から電話が来て“母さんが死んだ、葬式はこっちでやる。お前は来るな”…だってさ」
俺の親も親だったけど、枳殻の親も中々なものだな。葬式にすら呼ばれないなんて…、呼ばれないどころか来るな…か。
枳「自分は…、親にとって邪魔ものだったから…」
胡「そんな扱いを受けていても、命日には墓参りに行くんだな」
枳「一応…ね」
墓地に着き、俺たちは枳殻家の墓を掃除した。普通はその後に拝むものだけど、枳殻は拝まなかった。ただ、墓を見つめてこう言った。
枳「今度はお盆に来るから。お父さん来てくれるかわからないけど、綺麗にしてもらってね」
枳殻が墓参りに行くのはお盆と命日のみ。別に命日には行かなくてもいいはずだけど、何となく気分で来てしまうらしい。
胡「…帰るか？」
枳「うん、終わったから。付き合ってくれてありがと…」
枳殻とは途中で別れ、俺は自分の用事を終わらせに行った。
胡「こんにちは」
？「よう、遅かったな」
胡「少し、仲間の用事に付き合ってたので」
俺より少し背の高いと男たちが集まった、空気の悪い場所。マスクをしていてもたばこの匂いが鼻につく。
胡「本題に入りましょうか」
？「足取りは掴めた、アイツらの上の人間で間違いない。特に大きな動きはないが、着々と力は付けている。首領さんにはこれだけ伝えておけ。じゃ、情報料な」
ちゃっかりしてる人…。まぁ、今回は重要な情報を手に入れてくれたし少しいつもより多めに払うか。
胡「はい、どうぞ。これからも頼みますよ、情報屋」
情「はっ、生意気な小僧だ」
胡「まだ高校生ですから」
下「お前の無茶な頼みのせいで、俺らの寿命は縮みまくってんだからな！？」
胡「ははっ、それでもしっかり成功してるじゃないですか。俺は信用してる人にしかこういうことは頼まないので」
俺が言い返すと、男たちは複雑そうな顔をした。褒められたことに対しての嬉しさとこれ以上寿命を縮ませるなという不満の二つ。
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作者名：suffron* | 作成日時：2022年10月6日 16時
