８４．可哀そうな子供 ページ38
花桐SIDE
すいちゃんと別れて、私は一人で暗い道を歩いていた。住宅街なのに街灯が少ない。小さな子供が歩いてたらすぐに攫われてしまいそうね。
なんて思っていた。まさか、これが本当に起こるなんて誰も思わないわ。
子「まま…？」
「…え…」
ママと小さな声がした。それとほぼ同時に服を弱く掴まれ、一瞬幽霊でも出たかと心臓が止まりかけた。
子「まま…じゃない」
私の顔を見て、子供は泣き始めた。あまり大きな声で泣かれると近所の人たちに怪しまれてしまう、私は誘拐犯じゃない…。
「ままを探しているの？」
子「うぅ…ひっく…、まま…いない…」
迷子か…、捨て子か…。どちらにせよこのまま放っておくわけにはいかないわ。警察に届けようかしら…。
「ぼく、おうちわかる？」
子「…こ…っち」
鼻をグズグズさせながら私を引っ張って家まで連れて行ってくれた。自分の家がわかっているということはそこまで年齢は低くない。５歳…、最低でも４歳ね。
「ここ？」
小さな団地…。ゴミ収集車が来ていないのか、ゴミステーションには大量の袋が置いてある。離れているのにここまで臭いが来るなんて…。ちょっと近くに行きたくないと思ってしまうけど、この子のためよ…。頑張りなさい、A。
私は子供が住んでいる部屋に入った。
「う…っ…」
何…この悪臭…。よくこんなとこで住めたわね…、この子。
「ぼく、電気つけてくれる？…あ、届くかな」
子「……」
「ん？ぼく、付けれな…」
ッ…！！誰か…上から…、
？「チッ…」
声からして中年ぐらいの男性…、影を見ると少し肥満体質みたいね。…あの子は？
？「よくやった」
子「……」
暗くてよく見えない…。でも…、あの子はこの男の差し金だったということはわかった。
「私を騙せるほどの演技…流石ね。その人に躾けられたのかしら？」
子「…、ままを…返して…」
「…！！」
違う…。この子はお母さんを人質に取られて…、
？「うるせぇな。コイツを殺してからだ」
子「あっ！！」
殴る音と共に子供の吹っ飛んで倒れた音…。
子「ままを…返してよ…！このお姉ちゃんを連れてきたらままを返すって言ったもん！！」
？「うるせぇつってんだろ！！」
月の光で少し見えた。男はナイフのような凶器を持っている。光を一瞬反射したのを私は見逃さなかった。あの子を守らないと殺されてしまう。この子のお母さんはまだ無事…。焦らないで…。
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作者名：suffron* | 作成日時：2022年10月6日 16時
