嫌な予感 ページ23
「お化け屋敷？」
「おう」
授業の終わった休み時間。
次の始まりまでは時間があり、ナワーブが準備をしていると親友が声をかけてきた。
なんでもクラスのおちゃらけ者であるSが、この大学の近くにある廃墟に乗り込もうとしているらしい。そして親友はよくSともつるんでいたため、共に来ないかと誘われたそうだ。
「でもお前、そういうの苦手なんじゃねえの」
「そうなんだよなぁ……」
困ったように頭を掻く親友は、真夏に放送するホラー特番なども進んで見るようなことをしない。
そんな彼が近所でも有名な廃墟に誘われているのだ。
友人の誘いを断る訳にもいかず、話はどんどん進んでしまったらしい。
「お前は人が良すぎるからな……」
「だって、あんな強く頼まれたら断れねえって」
どうするかなぁ、とボヤく親友にナワーブは深くため息をつく。
「それ、俺も同行して大丈夫か？」
「んえ？大丈夫だとは思うけど……一緒に行ってくれんの？」
「アイツがお前を誘った目的は、単純に数合わせだろうよ」
「だよなぁ。何となくわかっちゃいたけど」
Sは目立ちたがり屋でもある。共に行くメンバーを聞いてみたところ、Sと親友以外に三人いるらしいのだが全て女子だそうだ。
まあつまり、そういう怖いことに耐性があまりない親友をダシにして女子からの株を上げようとでも思っているのだろう。
親友がSとつるんでいるのも、Sの方が親友に引っ付いていると言ってもいい。
親友を小馬鹿にされているようで、ナワーブにとっては面白くなかった。
「行くのはいつだ？」
「明後日の放課後だってよ」
「わかった。俺も行くってことをそいつに伝えておいてくれ」
「おー。あ、先生来た。じゃな、ナワーブ」
「あぁ」
『ナワーブよ』
退屈な話を聞き流していたナワーブの脳内に、ハスターの声が響く。
少々驚きながらも、ナワーブは脳に返すように返事をする。
『なんだよ』
『先程話していた場所、行く道にあった家のことか』
『あぁ、そうだけど。なんだよ、いきなり』
『……いやなに、気にするな』
ハスターがそういうことを言う時は、大体がろくでもない時だ。
嫌な予感がする。
ナワーブはこの先を思うと気が重くなり、ため息をついた。
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作者名：モノクロ饅頭 | 作成日時：2023年11月4日 20時
