気分屋さん日和。【木全翔也】

5話 ページ5

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飼育小屋の動物たちは待ってました！
とばかりに餌に飛びついた。


うさぎも鶏もカモも小鳥も
みんな元気そう。



お水もたくさん用意して、
軽く掃除もしてから花壇に向かうことにした。




野球部たちのランニングとすれ違いながら
飼育委員の倉庫に向かい、

ひとまずスコップと土の入った袋を運ぶことにする。








重たいけど、花壇まではそこまで離れていない。


落とさないよう気をつけながら向かうと
花壇の前に誰かがしゃがみこんでいた。



ダボッと着たオーバーサイズのTシャツ。


近くに行くまで、その人が誰かわからなかった。





「えっ」

木全「あれ、どこ行ってたの」

「飼育小屋…っていうか、
木全先輩何してるんですか…？」





なんとそこには、

先程まで部活動をしていた先輩。


先輩は答える前に立ち上がると、
私の持っていた土の袋を掴んだ。




これはデジャヴ。




「先輩、部活は？」

木全「委員会の仕事あるからって抜けてきたよ」

「な…なんで？」

木全「また一人だったら手伝うって言ったじゃん」





言ってた。

言ってくれてましたけど。



わざわざ部活動から抜けてきてまで
手伝ってもらうのが凄く申し訳ない。



さっきこの人に見つからなければ
先輩はここに来ることもなかったのだ。





土の袋を取られないよう ぐ、と力を込める。






「先輩、そんなに気を使わなくていいですから」

木全「それはこっちのセリフ。
重たいでしょこれ」

「木全先輩は仕事じゃないのに、部活あるのに…」

木全「仕事じゃないのは咲間さんもじゃん」

「私は部活ないから、」

木全「関係ないよ」






力を込めていたのに、

あっさりと引き抜かれる。



先輩はしゃがんていた花壇の横まで
楽々と持っていってくれた。



なんだか釈然としなくて
スコップ握ったまま動けずにいる私に、

しゃがむ木全先輩はちょいちょいっと手招く。





仕方なくそちらへ寄ってみると
先輩は花壇の端の方を指差していた。





その先には、見覚えのある2つの泥団子。









木全「昨日部活持って行ったら怒られたから
ここに飾ることにしたの」

「……」

木全「内緒ね？」





人差し指で しぃー とポーズする木全先輩。



もう申し訳ないとか気持ちが全部吹っ飛ぶくらいおかしくて。




だってこの人、

すごく真剣なんだもん。








木全「なんで笑うの」

「いやだって…んふふっ」

木全「へんなの」

「貴方に言われたくないです」

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