可愛い幼馴染はもういません。【川西拓実】

18話 ページ18

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拓実は終始むっすりとしていて
そんな彼をからかい楽しそうに笑う佐藤さん。

その二人に挟まれた私。


店を出ることになったときには
昼前に来たというのに空はオレンジと紺が
混じり合っていた。





「じゃぁ俺は他に寄るとこあるので、ここで」

「今日はありがとうございました」

「こちらこそ！またデートしましょうね」

「デート？？」

「景瑚くん…ほんと覚えとけよ…」

「あっはは！じゃ、また〜！」




最後まで愉快そうに笑っていた佐藤さんの
背を見送り、

さてどうするか…と沈黙が流れる。



ずっと不機嫌な拓実は
お店の中でも私との会話に
あまり反応してくれなかった。


どうしてここまで怒らせてしまったのか
全く心当たりがないのが申し訳ない。




…か、帰ろうか。うん。

休日の夕方だけど、なんか気まずいし。





「あのさあ」

「おわっ？！」

「え、なにそんなビビってんの」

「いや…別に…」





帰ろう！と決意した瞬間
隣に突っ立っていただけの拓実に声をかけられた。


相変わらずどこか冷めたような呆れたような目で
ジトッと見下ろしてくる。





「おせっかいやと思うけど、
いくら仕事相手とはいえ男と二人きりで
ほいほい出掛けるのはどうかと思う」

「…え？そ、そう？」

「景瑚くんは元からそういう気は無いやろうけど
社員とか、他の男なら普通気があって
デートに誘うもんやん」

「あ〜…？たしかに…？」

「わかってないのに相槌せんといてくれる？」

「………スイマセン」




何をそんなに怒っているんだろう。


ほいほい出掛けるって、そんな私、
フットワーク軽そうに見えるのかな。



素直に謝罪すると拓実は首の裏に手を当てて
目をそらす。


何を言おうか考えてるみたいで、
やがて諦めたように私の方へ視線を戻した。




オレンジと紺に混ざる空を背景に見る拓実は
場違いだけれど、綺麗だなと思った。




「…浮気になるかもしれないやろ」

「あ…」

「彼氏とうまくいってないのかもしれへんけど、
余計関係拗らせることになったらどうすんねん」

「えと…」

「まあ、…幼馴染はOKかもやけどさ、」

「そのこと、なんだけど…」





なに、と訝しげな顔で振り返る拓実。




別れたんだよね、って。


拓実の顔を見たら上手く言えなくなってしまう。




全然気にしてないのに、

むしろネタにしてやろうって昨日の夜決めたのに。





どうしてか、唇を噛んでしまう。



何も言えなくなってしまう。

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