第五十一訓「季節外れにも程がある」 ページ1
春うららとはこういうことをいうのだろう。
桜色の柔らかな絨毯の上に座り、上を見上げればこれまた美しい桜と澄んだ青空のコントラスト。少し目線を下げれば様々な人がほろ酔いの色をつけてどんちゃん騒ぎしている。
「いやー悪いなオイ。姉弟水入らずのとこ邪魔しちまって」
「いいのよ〜。二人で花見なんて寂しいだけだものねェ新ちゃん?」
そう言いながらお弁当箱を持って真ん中に置くお妙。隣の神楽はまだかまだかと瞳をキラキラさせながらお弁当箱を見つめてソワソワと身体を動かしている。お妙の隣に座る新八は相槌を打ちながらも浮かない表情をしていた。
「お父上が健在の頃はよく三人桜の下でハジけたものだわ〜。さっお食べになって!」
「待ってたアル!! ねェ結ちゃん!! 早く食べようヨ!! 私、もうお腹ペコペコヨ」
「そうだな。じゃ遠慮なく……」
そう言いカパッと軽い音を立ててお弁当箱の蓋を開ける。こんな大きいんだから、中身もさぞかし豪勢なことだろう。ワクワクしながらお弁当箱の中身を見た。
「なんですかコレは? アート?」
「私、卵焼きしかつくれないの〜」
大きなお弁当箱の真ん中にポツンと置かれた真っ黒な何か。形も歪で見てる限り炭の塊か何か。なるほど新八が浮かない顔をしていたのはこれのせいか。
「…………結ちゃんのつくる卵焼きはこんな色してないアル」
「しっ!! 神楽ちゃん、しっ!!」
新八が慌てて神楽の口を塞ぐ。口を塞がれた神楽は驚きながらも大人しく口を塞がれていた。
「ちょっと目を離したら焦げちゃって……」
そうお妙は言うが焦げちゃったレベルではない。これは卵焼きじゃない焼けた卵だ。なんなら原型留めてないしそりゃ結だって卵焼き焦がすことくらい過去に何回かあったがそれにしてもここまで焦がした覚えはない。
結は
「ま、見た目はともかく味は保証するわ! てことで結さん食べてちょうだい」
そう言ってジャリッ……と卵焼きらしからぬ音を立てながら箸を入れ、
冗談じゃない。俺はまだ死にたくない。
……そんなことは口が裂けても言えなかった。
第五十二訓「ここでは春なんだよ!! なんか文句あっか!!」→
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撫子(プロフ) - 美結菜さん» 初めまして美結菜さんお返事と更新が遅くなり申し訳ございません。ありがとうございます!!少しずつの更新ですががんばります!! (2023年5月7日 18時) (レス) @page22 id: ba69f6c565 (このIDを非表示/違反報告)
美結菜 - とても面白いです!続き楽しみにしています! (2023年2月14日 20時) (レス) @page21 id: f842e5f119 (このIDを非表示/違反報告)
撫子(プロフ) - 十六夜さん» 初めまして十六夜さんお返事と更新が遅くなり申し訳ございません。夜ちゃんと寝れてるようなら何よりです。続きを楽しみにしてくださりありがとうございます! (2022年11月23日 16時) (レス) @page20 id: ba69f6c565 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 続き気になりすぎて夜しか寝れません!!!更新待ってます! (2022年8月4日 21時) (レス) @page20 id: 5a52c0f3ec (このIDを非表示/違反報告)
撫子(プロフ) - 遠井茜さん» 初めまして遠井茜さん。ありがとうございます!作品と共にイラストまで褒めて頂けるなんて嬉しいです!更新は遅いですが書き続けていきますのでどうかよろしくお願いします! (2021年8月9日 12時) (レス) id: ba69f6c565 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:撫子 | 作成日時:2020年11月15日 18時