イントネーション. ページ6
. 大毅side
あれから授業が終わるたびに、譜久村さんの席の周りに人が集まった
何で引っ越してきたのかとか
芸能人に会うたことあるかとか
今までに何人と付き合ったかとか
まぁ、根掘り葉掘りいろんなこと聞きよる
関西人の悪いとこ出てんなぁって思いつつも、俺は聞き耳を立てていた
みんなに矢継ぎ早に質問されて、全然返答できてへん
転校初日やし、関西のノリも分からんやろうし大変そうやな
「ねぇ、譜久村さんはさ……」
「その辺にしといたり、先生来んで」
俺の言葉をきっかけに、集まっていたやつらは散り散りになって席に着いた
譜久村さんに視線を戻すと目が合うて、その瞳は不安で揺れていた
「大丈夫？」
そう聞くと譜久村さんは、ほほえみながら頷いた
「ありがとう、重岡くん」
東京弁の聞きなれないイントネーションに少しキュンってした
しかも、なんやねんその顔……
自分の心臓の鼓動が、やけに強く感じて戸惑う
先生が教室に入ってきて、授業が始まった
教科書読んだり、黒板の文字をノートに写したりしても、全然内容が頭に入ってこぉへん
“ありがとう、重岡くん”
さっきの言葉がずっと、頭の中でリピート再生されてる
俺を呼ぶ譜久村さんの声に、俺だけに向けてくれた笑顔
あかん、無意識のうちに にやけてまう
俺ってこんな単純なやつやったんやな
せや……おかんの裸でも想像したら、ええ感じに気持ちが萎えるんちゃうか？
脳内でグラマラスボディにしたり
おとんと首から下を変えてみたり
飼ってる鳥の体とおかんの……
やめとこ、別の意味でにやけそうやわ
授業に集中せな
小さく息を吐き、気合いを入れた
───
なんとか数十分耐え抜き、四限目終了
俺、ほんまよう耐えたわ
昼休みの時間になったから勉強道具を一旦机の中に直し、財布を持って流星と神ちゃんの席に向かった
「譜久村さん、人気者やな」
「転校初日やしな。……いやしかし、みんなエグい質問してんで」
「そうなん？」
「おん、内容もそうやけど量もすごいねん。返答するタイミングどこやねんって感じでさ」
「へぇー、譜久村さん大変そうやな」
「……流星？」
神ちゃんと会話してる間、流星はボーッと譜久村さんの席に集まるクラスメイト達と、囲まれてる譜久村さんを見ていた
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作者名：楓 | 作成日時：2023年8月18日 14時
