【鬼滅の刃】遡行者奇譚 (ページ17)

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拾陸ページ17

何時間もかけて漸く見えた屋敷の扉を開ける気力は残っていなくて。

「っは……ぁ、…だ……ぇか……………」

絞り出した声は蚊よりも小さかっただろう。

なのに、

「Aちゃん！？！？」

なんでお前は気づいてくれたんだ、善逸。

「嘘、ちょっ、大丈夫…じゃないよねどう考えても！！えっみたらし！？それよりAちゃんの方が大事！！炭治郎！炭治郎！？」

わたわたと慌てる姿は遠い遠い記憶に居る母親のように見えて、少し鼻がツンとする。

それから私は、心配しまくっている表情の炭治郎と、半べそかいてる善逸と、珍しく焦っている伊之助の顔を最後に意識を失った。

………

「ぅ……ぁ…………」

「おい！！花子…じゃねえAの目ェ覚めたぞ！！おい紋逸！豚太郎！！」

起き抜けの美丈夫は10割増で綺麗に見える。

声は野太いけど。あと花子って誰だ。

誰よその女ァ！！ってするぞ、いいのか。

そんな巫山戯たことを考えていると、涙ぐんだ三人の顔が視界に広がる。

どうやら十八日間も眠り続けていたらしい。

人なら死んでても可笑しくないの高熱がつい三日前まで引かず、いつ死ぬ分からないくらい重病患者だったみたいだ。

「回復なされたようでなによりです…」

そう言ってくれたひささんの声も少し涙声だったような気がする。

「そ……に、…っ、か」

「えっなんて？」

二週間以上も寝続けていたせいで喉から声が出ず、意思の疎通が不可能となってしまった。

因みにさっきは、『そんなに死にそうだったのか』と言ったつもりだ。

というか、あの男はなんだったのだろう。

突き刺された箇所に触れると、未だに筋張っていた。

………

目が覚めてから三日。

「あー、あー、あぁぁぁ！！」

「待て！やっと声が出るようになったんだからいきなり叫んじゃ……！」

「っげほ、」

「ホラ！！」

声がやっと出るようになった。

水を差し出し背中を摩ってくれる炭治郎はきっと老介護が上手いと思う。

そして声が出るようになったので、

「さあAちゃん、あの日何があったのか、しっかり聞かせてもらうからね！」

「そうだぞ！！」

「子分傷付けた奴ァ俺が許さねえ！！」

「待て私はいつ子分になった」

事情聴取が執り行われようとしていた。