74 ページ24
…
歌えるようになってから
そう宣言したのに
思ったより早く来ちゃったな
久しぶりの家を見上げて 小さく笑った
少し緊張した面持ちのおみくんは、
私の隣にピッタリと並んだ
「…やばい緊張してきた」
『ふふ、すごい厳しい人だよ』
「…まじ?」
ネックレスなんて取るべき?
チェーンサングラスとかやばいじゃん
慌てて取ろうとするおみくんに我慢できなくてぷって笑っちゃった
『うそだよ笑
普通のおばあちゃん。優しくて、大好きなんだぁ 』
「… やられた笑」
あーって言って笑うおみくん
緊張ほぐれたかな?
チャイムを押して、すこししてからガラリと玄関が開いた
「 よく来たねぇ
『おばあちゃん、久しぶり… 』
「久しぶりぃ、元気そうでよがった」
手を取って優しく握ってくれる、おばあちゃんの手が暖かくて 鼻の奥がツンとした
「初めまして。登坂広臣です」
「まぁまぁ、ずいぶんと男前な人だねぇ」
おみくんと並ぶと
おばあちゃん一段と小さく見える…
握手をしてる2人が微笑ましい
.
「ほうかぁ…
あのお店に通ってたんだあね 」
『私も気づかなかったよ…』
「騒ぎになったら、もう行けないって思ってたから…笑」
私たちは3人分のお仏壇に手を合わせた
真剣な姿に、連れてきた人がおみくんでよかったって気持ちがじんわりと広がる
それから、お茶を飲みながら3人で色々なことを話した
「こんな男前な人が来たら大変だもんねぇ」
『おばあちゃん、臣くんすっごく有名なアーティストなんだよ』
「あらぁ!そうだったの?」
「一応やらせて貰ってます…!」
「ごめんねぇあんまりテレビみなくてねぇ」
どちらかと言えばラジオだもんね
どんなことをしてるの?
おばあちゃんのそんな質問に、丁寧に答える彼がやっぱりたまらなく愛おしく感じる
会話に花を咲かせてる2人を居間に残して、また仏間に戻った
.
写真の中の3人は、前と変わらない笑顔で写ってる
あんなに普通に生きてたのに
簡単に会えなくなる
おばあちゃんだっていつまでも元気なわけじゃない
現実って、
やっぱり苦しい
『 … お父さん、おみくんすごく素敵な人なんだよ
付き合っていないけど、
おみくんは、
みんなに自慢したかったなぁ 』
…
613人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:miu:miku | 作成日時:2020年9月15日 22時