真実の赤いリンゴ─貴方目線─ ページ15
教室を出てからAは、宛もなくただ歩いていた。
すると、目の前から咲夜が歩いてくるのが見えた。
だがいつもと雰囲気が違い、どうやらAがいることも気付いてなさそうだった。
「咲夜」
Aがそう呼ぶと、咲夜は顔を上げてAの姿を視界に入れる。
「ササリン」
ふにゃりと、女子力の高い笑顔でAを呼んだ咲夜は、立ち止まる。
少しの間、沈黙が流れる。
Aは恋失と何を話したのか、聞くのを迷った。
すると、咲夜が口を開く。
「ササリンは……さ、クロネッチとリリリンが旧校舎の屋上でやってること、知ってる？」
「ッ！？」
咲夜の突然の告白に、Aは驚きすぎて声もでなかった。
「その様子だと、やっぱり知ってるんだね」
「何で……咲夜がそれを……」
「見ちゃったんだよ、かなり前に。クロネッチが自分の歌を聞かせて、リリリンが絵を見せているのをさ」
Aは全身の血が一気に引き、バクバクとなる鼓動を必死に押さえ付けた。
「クロネッチも、病気なんでしょ？」
「……」
いつか、バレることだったのかもしれない。
今のこの状況は、必然か、偶然か。
恋失と璃里理が旧校舎でやっていることは知っていた。
Aも時々、本当にたまに恋失と歌っていたのだ。
そして運良く、いや運悪く──咲夜はそれを見ていないようだった。
「ササリンも、リリリンと関わるのもうやめなよ」
咲夜の言葉に息が詰まる。
どうして、そんなこと言うの。
璃里理が病気だから？
もしそうなら私は──？
もし、私の病気のことも分かったら、咲夜はどうするの？
「やだ……っ」
「クロネッチ、きっとリリリンのせいで狂ってるんだ、傷の舐め合いをしてるだけだよ」
「ッなんでそんなこと言うの！？璃里理が病気だから！？人前で絵を描くから！？」
感情のまま叫ぶと、咲夜は黙る。
きっとそれは────肯定の意。
「あっ……」
そっか、咲夜はやっぱり、病気の子なんて嫌だよね。
私なんて──嫌いになるよね。
「ごめんね咲夜…………私も、病気なの……っ」
震える体をなんとか立たせて、咲夜に告げる。
咲夜は今どんな顔をしているだろう、見たい、見たくない、見れない。
もうやだ、涙出てきそう。
「A」
崩れ落ちそうになる体を、ふわりと誰かが支えてくれた。
それは紛れもなく、咲夜だった。
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作者名：中学生なのに暇人 | 作成日時：2014年9月7日 22時
