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再会 ページ36

昼下がりの探偵社御用達の喫茶、うずまき。

そこにはお昼休憩に食事をしに来た新人敦と鏡花が居た。

三社対立が終わり、久々の静かな日だ。

否、完全な静かではない。

敦は鈍感なため気付いてないが、渦巻きの新人バイトであるモンゴメリと鏡花の間で一寸した溝がある。

今モンゴメリは買い出しなので落ち着いている。

カランカランと軽やかな入店のベルが鳴り、二人はモンゴメリが帰ってきたのかと入り口を見る。

「あれ、君は」

敦は驚いて声をあげる。

鏡花は相手を見たことがないため首を傾げる。

茶髪に似た三つ編みされた赤毛に、手には金髪の青いドレスを着たセルロイド人形を抱えている。

「いらっしゃい。

好きな席へどうぞ」

奥から女店主が出てきて少女に案内する。

少女は礼を云って店内を見回す。

そんな彼女に敦は手を振って近くへ来るように合図する。

それを見た鏡花は少女にだけ鋭い殺気を向ける。

「有り難いけど、此処へは人探しに来ただけだから」

少女、沙羅はそう云いながら歩み寄る。

「人探し?

なら上の探偵社に」

「あまり本人に知られたくないの。

喉乾いたからその手付かずの水貰っても良いかしら?」

沙羅はそう云って鏡花の前にある水を指す。

鏡花が頷くのを見届けて、沙羅は水を飲み干した。

「人探しって誰?」

「ルーシーよ。

組合から解放されてから何処に居るのか判らなくって。

貴方なら知ってるんじゃないかと思って来たのよ」

敦はそれを聞いて鏡花と顔を見合わせる。

「ああ、彼女なら今」

敦がそう云った時、またカランカランと軽やかな音がして誰かが入ってくる。

3人の視線は自然と入り口に注がれる。

入店者と沙羅の視線がぶつかり、二人は固まる。

「あら、ルーシーちゃん。

お帰りなさい。

今日は早かったのね」

女店主が出てきてモンゴメリに笑い掛ける。

その声を合図として二人は動き出した。

「沙羅!」

モンゴメリは名を呼び、荷物を店主に渡し駆け寄る。

沙羅は無言で走り出し、モンゴメリの横をすり抜け外へ出る。

「一寸、沙羅!

待って!

マスター、済みません一寸抜けます!」

モンゴメリは振り返らずにそう云うと沙羅の後を追って駆け出した。

横浜を舞台に鬼ごっこの開始である。

後に残された敦と鏡花はポカンとしていた。

店主は仕方ないねぇ、と笑うと奥に引っ込んでいった。

鬼遊→←人形



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笹山花音(プロフ) - きなこさん» 最後まで読んでくださり、有り難う御座いました!大好きとは、嬉しい限りです。応援有り難う御座いました! (2017年8月21日 11時) (レス) id: 2d1a61fd05 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 完結、おめでとうございます! この作品大好きでした。なので、ちょっと寂しくなりますね。これからも創作活動、頑張って下さい! (2017年8月20日 19時) (レス) id: b7dbad87d7 (このIDを非表示/違反報告)
笹山花音(プロフ) - ルルさん» 御指摘と感想有り難う御座います。直しましたが、此れで宜しかったでしょうか? (2017年7月20日 14時) (レス) id: 2d1a61fd05 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - 何度もすみません。時間の辺りから名前が沙羅のままになってます。 (2017年7月20日 14時) (レス) id: 622016f6ff (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - タイトル入れ忘れてました。言語の所です (2017年7月20日 14時) (レス) id: 622016f6ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:笹山花音 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年5月19日 21時

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