願い ページ32
コンコンと遠慮がちなノックの音が部屋に響く。
「入って良いぞ」
俺は書類にサインしていた手を止め、ノックの主に応える。
「失礼します」
その声を聞いて俺は違和感を感じる。
「珍しいな。
君が一人で来るとは。
モンゴメリ君は如何した?」
部屋に入って来たのは野口君。
心なしか呼吸が乱れているようだ。
何時もモンゴメリ君の影に隠れるようにして過ごして居る。
それが一人で来るとは珍しい以外に云いようがない。
「彼女は未だ戻ってきてい無い筈です。
任務結果を報告します。
虎の少年を捕らえることに失敗しました」
淡々と彼女は告げる。
「原因は予想外の邪魔が入った事と、彼が想像以上に頭の回る者であったことです」
「それで?
俺も暇ではない。
人前に立つことを拒み続けてきた君が親友を置いてまで急ぎ俺に逢う理由は何だ?」
業と腕時計を確認する。
彼女が走って、モンゴメリ君が歩いてくるのならば、モンゴメリ君が此処に来るまで精々後5分と云ったところだろう。
「今回の作戦によりルーシーの異能は敵にばれました。
ですがわたしの異能はばれていません。
普通ならば戦術価値の無いルーシーを切り捨てるでしょう。
ですがそれを逆にして欲しいのです」
「何故だ?
それによって我々はどのような利益がある」
「今回の作戦が失敗したのはわたしの力不足です。
どうか彼女を切り捨てないでください。
戦闘要員が駄目ならば、メイドでも良いんです。
彼女の居場所を奪わないで下さい」
彼女はそう云って頭を下げる。
「なぜ君が其処までする?」
「彼女を守ることがわたしの存在理由だからです」
まっすぐと俺を見るその瞳に光はない。
多だ淡々と仕事をする感情の無い奴 隷と同じ目だ。
「判った、そうしよう。
君は頸首、モンゴメリ君はメイドとして雇う。
此れで良いな?」
しばらく考えた後俺は云う。
「はい。有り難う御座います。
失礼します」
一礼して彼女は去っていった。
直後ノックの音がして声がかかる。
モンゴメリ君か。
俺は入室の許可を出した。
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笹山花音(プロフ) - きなこさん» 最後まで読んでくださり、有り難う御座いました!大好きとは、嬉しい限りです。応援有り難う御座いました! (2017年8月21日 11時) (レス) id: 2d1a61fd05 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 完結、おめでとうございます! この作品大好きでした。なので、ちょっと寂しくなりますね。これからも創作活動、頑張って下さい! (2017年8月20日 19時) (レス) id: b7dbad87d7 (このIDを非表示/違反報告)
笹山花音(プロフ) - ルルさん» 御指摘と感想有り難う御座います。直しましたが、此れで宜しかったでしょうか? (2017年7月20日 14時) (レス) id: 2d1a61fd05 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - 何度もすみません。時間の辺りから名前が沙羅のままになってます。 (2017年7月20日 14時) (レス) id: 622016f6ff (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - タイトル入れ忘れてました。言語の所です (2017年7月20日 14時) (レス) id: 622016f6ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:笹山花音 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月19日 21時