心配 ページ38
「失礼します」
あたしは今回はちゃんとノックをして入る。
「やあ、A君。
体調は如何だい?」
言葉に僅かな苛立ちが感じられる。。
やっぱり怒ってた。
「お陰様でこの通り何とも御座いません。
御心配と御迷惑をお掛けしました」
頭を下げると、首領は溜め息を吐く。
そして立ち上がる。
「今から中也君と死傷者の確認に行くが、君も来るかね?」
「勿論です」
何人の人が死んで終ったのか、この目で見る。
「では、半刻後に下に来給え」
あたしは返事をして部屋を出た。
傷の事は何も訊かれなかった。
「被害総数は?」
死者が一時的に集められた処に着いたとき、首領は訊ねた。
ざっと見百人位だろうか。
その中には何人も見知った顔がある。
車の中で聞いたところによると、白鯨に捕らえられた敦が上空から落ちて、太宰に夢野の人形を届けてくれたお陰で、街は助かったらしい。
途中道原が赤子を預けられ、銀と広津さんが加わり、ひぐっちゃんに家族と勘違いされてしまったらしい。
見たかった。
赤子はひぐっちゃんによって母親の許に帰れたらしい。
「直轄構成員が十八。
傘下組織を含めると、百近い死者が出ています」
ちゅやが帽子を取る。
「首領」
あたしは首領を見上げる。
それだけで何がしたいか判ったようで、黙って頷いて呉れた。
あたしは異能でカーネーションを作り出し、マフィアを、ヨコハマを守る為に頑張って呉れた事にお礼を云って、花を捧げていく。
その中にはあたしの部下だった人が何人も居た。
涙は出ない。
そんなモノ、とっくの昔に枯れてしまった。
こういうときは、悲しい時は泣くのが普通なのに。
全員分終わって戻ってくると、姐さんが居た。
「久しぶり、姐さん。
解放されたんだね」
「私が役立たずな捕虜だからと云って、伝達人にされていもうたのじゃ」
そう云って姐さんは口元に手を当てて笑う。
十歳しか違わないのに、かなり違う。
「手紙の内容は?」
「茶会の誘いじゃ」
ふぅん、密会か。
首領が持っている手紙を除き見る。
今日の午後三時ってかなり急ね。
「黒蜥蜴とA君を連れていくよ」
「判りました。
伝えてきます」
あたしはそう云ってその場を後にする。
多分、あたしが首領に申し出た取引の事は、あたし個人の意見として言われるだろう。
または、伝えられないか。
実現の可能性は低そうだ。
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笹山花音(プロフ) - コメント有り難うございます!!面白いなんて、嬉しいです。 深紅の瞳、読みました!とても面白くて、続きが気になる作品ですね。 (2017年4月1日 18時) (レス) id: 33f32af820 (このIDを非表示/違反報告)
紅月(プロフ) - すごく面白いです!!!!更新頑張ってください! (2017年3月31日 23時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:笹山花音 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年1月22日 21時